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セミナー・研修

1時間目 対人感性力編(1)

用地業務に精通したベテランたちと渡り合う

●2日間の講習会は、ウォーミングアップも兼ねた「対人感性力編」で幕を明けます。用地交渉の5つの事例を取り上げ、受講者のみなさんが交渉担当役に扮し、"地権者"と交渉にあたります。地権者役を演じるのは、近畿建設協会の職員。30年以上、公共用地取得の実務を近畿地方整備局で行ってきたベテラン担当者が、みなさんのチャレンジを受けて立ちます。

●実際にあった用地交渉事例の担当講師を務める近畿建設協会の職員。自身の体験をもとに、実際にあった用地交渉の事例を取り上げ、交渉担当者がどのように対応し、どう交渉をまとめ上げていったのか、実体験をまじえながら分かりやすく紹介します。受講生のみなさんは、少人数のグループに分かれ、地権者の立場で投げかけられる問題に対して応答し、ベテラン用地担当者の行動特性や、交渉の運び方のヒントを学びます

●受講者はチームに分かれ、各チームに、実際にあった事例を元につくられた課題が与えられます。それにどう対応するかを各チームメンバー同士で話し合い、交渉の方針を決め、代表者(2名)が「交渉担当役」となって、「地権者役」を演じる職員と本番さながらの交渉にあたります

課題テーマ

  • 境界線の主張が異なっていた場合の対応策は?
  • 前任者が引き継ぎせずに異動し、不信感を募らせる地権者への対応は?
  • 認知症の疑いがある地権者への補償金額提示の方法は?
中坪
正木さんも、チームを代表して「交渉役」を務められました。模擬交渉で「地権者」とやり合う時は、やっぱり緊張されましたか?
チームのメンバーも含めて、まわりはその日の朝にお会いした初対面の方ばかり。とても緊張しました。
正木
中坪
「地権者さん」との模擬交渉は、どうでしたか?
与えられた課題がとても難しい内容でしたし、交渉術についてまだいろいろと教わる前でしたので、「なんとか説得しないと」「説き伏せないと」という気持ちばかりが先立ち、うまくいきませんでした。
正木
中坪
地権者役になった近畿建設協会の方々は、公共用地交渉で30年来の経験を持つベテランですから、なかなか難しかったかもしれませんね。
チーム内での事前ミーティングで筋書きを描いていたんですが、想定外の対応をされると、アタフタするばかり。1日目のしょっぱなから、いきなり強烈なパンチをお見舞いされた気がしました(笑)。
正木
中坪
このプログラムは、緊張しながら来られた受講者の方の「頭の体操」も兼ねています。キャリア30年前後のベテランたちが、自らの経験をもとに地権者の立場で受講者のみなさんに問題を投げかけ、どう対応すべきか、どう解決していけばいいかをアドバイスする場として、気軽に参加していただけたらいいと思います。
2時間目 対人感性力編(2)

「大切なことは何か」に気付くための時間。

●この研修では、受講者のみなさんが2人1組でペアを組み、それぞれ「地権者役」「交渉担当役」となって、概算補償額を説明する演習(練習問題)を行ないます。ペアを組む2人は、業種・業界が重ならないよう、運営側によってあらかじめセッティングされています。地方自治体の担当者と鉄道会社の担当者、道路会社と電力会社など、異なる業種・業界の方同士をペアリングすることで、幅広い知見に触れることができます

●受講者には、地権者役と交渉担当役のそれぞれの条件が示されています。例えば交渉担当役の方には、地権者との交渉の状況、概算補償額の明細と算出の根拠などが、また地権者役の方には、人物や物件の概略、交渉に臨む姿勢などが細かく設定され、互いにその役になりきって、やり取りを行います(制限時間5分)。終了すると、「交渉担当役は何を意識すべきか」「地権者役の人物をどれだけ理解できたか」「着地点はどこか」などの観点から演習を振り返り。交渉で必要なこと、大切なポイントを確認した上で、再度演習を行います。

●また、演習では地権者との距離感を縮める方法のひとつとして、対人折衝に必要な基礎的技術を練習します。腹式呼吸・アイコンタクト・間合い/声のトーン・相づち・笑顔・注意すべき非言語表現など、動作や習慣に関する基礎技術演習(技術訓練)も行います。

中坪
用地交渉で最も大切なことは、概算補償の金額やその算出根拠を地権者に説明することではありません。地権者がどんな人で、何を思い、どうありたいと考えているのかを理解することです。このプログラムでは、そのことを知識として「教える」のではなく、受講者のみなさん一人ひとりに気付いてもらう、肌で感じてもらうことがいちばんの狙いです。
振り返りの時間を挟んで、同じ演習を2度繰り返したことで、「ビフォー&アフター」じゃないですが、見える景色がまったく違いました。用地交渉で本当に大切なことは何なのか、説明することばかりに気を取られていた今までのやり方がいかに一方的なものだったかを再認識できただけでも、とても勉強になったと思っています。基礎技術演習も、楽しい経験でした。
正木
中坪
用地交渉といっても、基本は人間同士の1対1のやりとりですから、対人折衝の基本技術を身に付けておけば、やりとりがスムーズに運べます。例えば交渉でパニックになった時に腹式呼吸で気持ちを鎮めたり、折り合いが悪くなったような時、アイコンタクトで自然に目を合わせるテクニックを知っていれば、状況を打開することができるかもしれません。
人の目を見ながら話すとか、強調する時は声のトーンを変えてみるとか、ふだんは意識しなくてもできることが、用地交渉の場では「説明しないといけない」「相手に分かってもらわないといけない」という強い気持ちが働くからか、普段どおりできなくなってしまいます。だからこそ日頃から訓練を積んでおく必要があると気付かされ、とても印象に残るトレーニングでしたね。
正木
中坪
大切なことは、「その場限り」のテクニックではなく、いつでも自然にそれを出せるように日頃から訓練することです。もしかすると用地交渉にのぞむ時、心配事があって気分が落ち込んでいるかもしれない。そんな時でも、常に笑顔でスムーズに話せるために準備を整えておくことは、プロとしての当然の心構えだと私は思います。
どんなビジネスでも、対人折衝能力はとても重要なスキルです。その意味でここで学んだことは、用地交渉だけに限らず、あらゆるビジネスの現場で有効だと感じました。
正木
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