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登記しよう!

「用地取得は交渉技術も重要だが、登記も絶対忘れないで!
登記(内容の確認)ではじまり、
登記(移転登記・設定登記)で終わる…!?」

用地業務の流れのなかで、多様化した登記内容・登記手続について、具体的に分かり易くご紹介します。

はじまりはいつも登記vol.6 所有権以外の権利 ー抵当権ー

2022年10月19日 公開
登記しよう!! はじまりはいつも登記vol.6

 とある市の用地課の新人、緑山さん。用地の業務も初めてで、勉強の日々です。
 前回は、"所有者"を特定にあたっての様々な課題や、それに対応する制度等について学びましたね。今回は次のステップに進みます。

 

緑山

上島さん、前回もありがとうございます!所有者の特定はなんとか進みました。

上島さん

それはよかった。所有者の特定ができたら、次は何をするんだった?

緑山

たしか・・・そうだ、やっと「権利関係の特定」ができるんですよね。「用地取得と登記業務の関わり」一覧図には抵当権や敷地権のことが書いてあったと思うんですが・・・。

上島さん

えらい!緑山さんは記憶力がいいね。確認したい人は前の記事をみてね。(→Vol.0はこちら

所有権以外に様々な権利が設定されるけれど、まずはわかりやすいところから説明していこうか。

さて、この間取得した「登記記録証明書」(Vol.3参照)に「権利部乙区」は記載されていたかな?

緑山

権利部乙区には、「抵当権」がひとつ付いていましたよね。・・・そうだ、これこれ。

▽ 抵当権が設定された権利部(乙区)抜粋 ▽

toki_otsubu.png
緑山

そういえば、「抵当権がついたまま土地を買収してはいけない!」と上司に言われているんですが。

上島さん

そうだね、どの起業者も抵当権の付いた土地は買わないよ!

もし、「ローンは完済していて抵当権が抹消されていない」だけなら、抹消手続きをしてもらえば済むんだけど。ローンがまだ残っているなら別の手続きが必要だね。

たとえば次の図のとおり、道路拡幅に伴う買収予定地(Ⅿさんの土地)に抵当権がついていた場合、どうしたらいいかな。

vol.6_img.png
緑山

ええっと、Ⅿさんの土地の一部を買収するためには、① 買収部分を分筆して、② その分筆地の所有権を移転 するんですよね。
あれ?このときの分筆は...所有者のⅯさんにしてもらうのかな・・・?

上島さん

うん、土地の分筆等は、通常なら所有者が何か目的があってするんだけどね。

買収されるために自分で分筆をしよう、という人はまずいないよね。

緑山

たしかに...「なんで自分が分筆手続きの手間まで?」と思っちゃいそうですね。

上島さん

だから起業者には、契約(売買等)が成立したら、分筆等所有権移転登記のために必要な前提登記をする権限が与えられているんだ。これを、代位権に基づく代位登記(※)というんだよ。

緑山

起業地の分筆は、起業者ができる手続なんですね!

分筆したときって、抵当権はどうなるんですか?元の土地(残地)と分筆地のどちらかだけになったり、面積比で割ったりするんですか?

上島さん

ちがうよ!

抵当権が設定された状態でただ分筆してしまうと、抵当権は分筆地にも転記されるよ。つまり、残地と分筆地の両方に、同じ抵当権が登記されるんだ。

緑山

え~!そうなんですか?そうだ、起業者が代位で分筆したあとに、買収する部分の土地の抵当権を抹消すればいいんじゃないですか?

起業者と抵当権者とで、手続できそうですよね。

上島さん

たしかに、起業者が所有者になれば、抵当権者と共同申請で抵当権の抹消登記はできるよ。

でもその場合、抵当権者にはいくらかの金銭を支払う必要がある場合があるだろうね(※個別の状況による)

そういった調整が困難なので「抵当権がついた土地は買収するな」といわれているんじゃないかな。

緑山

うーん・・・そうなると買収する前に抵当権を抹消するには、土地の所有者さんと抵当権者の共同申請で抹消登記をしてもらうしかないのかぁ。

抵当権の抹消には、代位権を持っている起業者でも一切関与できないってことですよね・・・。何かほかにいい方法はないんですか?

上島さん

とっておきの方法が一つあるよ!

緑山

えっどんな方法ですか?!早く聞きたいです!!

上島さん

み、緑山さん、落ち着いて!

それはね、抵当権者にお願いして、買収地部分の抵当権を放棄してもらうんだ。

抵当権者が、"買収される分筆地については、抵当権を放棄する"旨の申述をすれば、分筆地に抵当権は転記されないよ。

具体的には、抵当権者から分筆地について「抵当権一部消滅承諾書(印鑑証明書の添付が必要、法人の場合「法人番号」を記載すれば不要)を提出してもらうんだよ!

分筆の際にこの書類を添付すれば、分筆地には抵当権は転記されないことになっているから、分筆地(起業地)は乙区のない(抵当権等がない)真っ白な土地になっているよ!これなら土地の所有者には、登記に関してはなんら関与してもらう必要もないしね。そうしてやっと、買収することができるんだ。

緑山

なるほど、分筆後に抹消するのではなく、分筆の時点で抵当権を放棄してもらうことで、分筆地に抵当権を転記させないんですね。

上島さん

そういうこと!ただ、残地と分筆地の割合などによっては、抵当権者(銀行)から、一部消滅を承諾する代わりに補償金からの返済を求められる場合もあるよ。その場合は、原則所有者が補償金から支払うことになるね。

緑山

たしかに、残地が小さかったりすると、担保としての価値が下がってしまいますね。

上島さん

ただしこれは個別の状況によることだから、その都度、確認を取りながら進めてね。 さて、抵当権等がない分筆地について、所有権移転の登記をすれば、登記の手続きは完了だよ。

ま と め

  • 抵当権が設定された土地を分筆すると、抵当権は転記される
  • 抵当権を転記させないためには分筆時に「抵当権一部抹消承諾書」を添付
  • 「抵当権一部抹消承諾書」は抵当権者(銀行など)から提出してもらう
  • 起業者は代位で登記手続が可能

(※) 民法423条の7(登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権)

 「登記または登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗できない財産(例えば不動産等)を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。」

【参考】

残地が小さい・不整形になるなど 残地の担保価値が低くなってしまう場合、補償金からの返済を条件として求められることもある

vol.6_img2.png

 


 「所有者の特定」の次は「権利関係の特定」でしたね。土地には所有権以外に様々な権利が設定されることがあり、今回は目にすることが多い「抵当権」についてご紹介しました。今後も用地業務に関わる登記業務をご紹介していきますので、次話以降もぜひご覧ください。

 

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