閉じる

セミナー・研修

和歌山県用地対策連絡協議会の皆さまに初任者研修について聞く Vol.2

和歌山県用地対策連絡協議会の皆さまに初任者研修について聞く Vol.2

和歌山県用地対策連絡協議会の皆さまに初任者研修について聞く Vol.2

2020年8月26日から3日間、和歌山県和歌山市にある県自治会館で和歌山県用地対策連絡協議会(以下、県用対連)様主催の「初任者研修」が行われました。初任者研修についてお話をうかがった前回からの続きとして研修の改善点について、和歌山特有の課題、用地取得に関する現状などについてお話をうかがいました。
最後までお読みいただけますと幸いです。

改善すべき点など教えていただければ

新井 あえて1つ挙げるとすると、講師陣の経験談は都市部の話ですよね、前身が阪神高速ですから。和歌山にはそのような都市部があまりないので、取り組み例や課題などに対して少し距離を感じることはあります。でもそれを上回るわかりやすさ、親近感があるので話は頭に入ってきやすいです。

たしかに、用地交渉にも地域特性があるようですね。
和歌山県ではどのような公共事業の用地取得に関する事業が多いですか?

中西 私たちは県職員ですから、事業でいえば一般国道や県道が多いですね。道路の拡幅もありますし、拡幅よりバイパスのほうが効用を高められるとなれば元の道路からバイパスへつなげる工事などもあります。

津山 場所によっては河川改修などもありますし、台風被害への対応なども含めるといろいろなものがありますね。台風や地震、津波などの自然災害はいつどこで発生するかわからないので、未来の投資のための防災面の工事もあります。

中西 何を行うかは事業予算で分けられていて、道路に使う予算、河川、砂防に使う予算、そして災害が起こればその災害用の予算とそれぞれに枠がありますので、限られた財源のなかで、県民生活の向上や安全・安心へのニーズに応えるべく取り組んでいます。

新井 和歌山県は雨が多い地域なので全国的にも治水、砂防の工事は進んでいると思います。都市内では、防災や交通安全の面から道路拡幅をしたい場合が多いので、その場合は沿道の皆さまに移転のご理解とご協力をお願いすることになりますね。

補償説明ではどのようなことが課題になりますか?

津山 権利関係者の多いマンションや店舗も補償説明が大変ですが、和歌山県の特徴としては、相続登記の未了が多く、課題になりますね。

新井 都市部では権利意識が高い傾向にあるので亡くなられた方の相続など、間を開けずに相続人の方がしっかり対応されることが多いですよね。県の南部エリアでは、所有者不明土地で苦労することがあります。たとえば、相続人が所在不明であるとか、登記名義人が亡くなり数代にわたって相続登記がされていない場合ですね。特に、戦前戦後に海外へ移住された方の土地については、所在がわからず、作業が難航することがあります。

中西 和歌山から海外へ移住された方は、戦前に多くいらっしゃいます。権利者が特定できるまで戸籍をさかのぼっていく必要がありますが、戸籍が取れないこともあります。

移民の方がいらっしゃるのは地域特性ですね。
相続については当社に「相続人を探そう」という研修があります。
手書きの登記簿謄本などを読み解いていく場合もありますね。

中西 昔の戸籍をたどるのは特に大変ですね。県には用地を専門にしている担当者がおり、それ以外に、戸籍や登記簿を用意して用地事務をサポートしてくれる会計年度任用職員がいます。その方たちと分業している形です。

新井 ただこれは県の話で、市町村の状況とは違います。市町村には用地専門の部署や職員がおらず、用地取得業務外の業務と兼任しています。自分たちであれこれとやらないといけないため感じている課題も違うと思います。戸籍や登記簿も自ら準備しなければなりませんし、市町村の用地職員は広く知っておかないといけないのでご苦労も多いと思います。会員である市町村が円滑に業務を進められるよう、さらに磨きをかけるための研修は必要かもしれませんね。

県と市町村では異なる課題もあるのですね。県では用地取得の専門職の採用もあったそうですが

新井 平成5年から9年まで、和歌山県では用地を専門とする職員の採用がありました。そのとき採用された人は、前職が民間の不動産会社など、用地業務に生かせる仕事内容の人たちでしたね。

専門職ではない方々は異動によって用地の部署に来るわけですが、最初はどういう反応が多いですか?

新井 県の仕事は、実は県民の皆さんと接する機会が少なく、机に向かうものが多いです。用地の仕事はその逆で、対人折衝ですよね。土地を譲っていただくために県民の皆さんのところへ行き、事業と補償等についてご説明して、納得していただく。多くの人とコミュニケーションを取るため、そのような仕事に慣れていない職員には辛いと感じることもあると思います。ただ、デスクに座っていて公共事業が進むといいですけれど、自分から一軒一軒足を運んで、出向いて、用地を取得しないと事業が進みません。地道な仕事なので、「用地の仕事は辛いなぁ」と思われるのは仕方がないのかな、と。けれど、用地取得は成果がはっきりと目に見える仕事です。道路が完成したのを見て、「自分がここを対応して、契約に行って、工事をして。そしてこんな道ができるんや」と思えるようになれば楽しくなりますよね。

中西 その通り、用地の仕事は形で残ります。公共事業ですからその地域に必要だと判断されたものをつくっているので、完成したときに心から喜んでくれる人が多くいます。そして、その公共事業をスタートさせるための仕事が用地の取得ですよね。取得に際しての苦労は多方面の方々が関わることですからどうしても色々とありますが、その苦労がなければ、その地域のよりよい発展はなかったかもしれないのです。できたものを見ながらやりがいを感じ、それを積み上げていく。初任者のときは不安のほうが多いはずですが、取得の交渉で県民の皆さまからご協力の意思をいただければうれしいし、完成した道路を自らの目で見ると達成感を味わうことができます。それは、他の部署ではできないことですよね。

新井 もし仮に補償のご説明時に辛いことがあったり、何かを言われたりしたとしても、それはあくまでも仕事のうち。同僚や上司みんながその話を聞いて、職員のガス抜きをして、「まぁまぁそういうこともあるけど」と励ましています。人間ですから、状況によっては腹が立つこともありますが、それはどの仕事、どの部署でも同じことですよね。用地の契約では、権利者さんが自分の目の前で実印をついてくれるわけです。それは人生の中でも何度もあることではなくて、すごいことですよね。そういう経験を積んでいけば、自然と用地事務の仕事を受け入れられるようになると思います。私たちは新任職員の気持ちの面をフォローしたり、研修を行ってスキルアップのお手伝いをしたりして、サポートしています。

市町村間の連携や、情報共有はありますか?

津山 和歌山は北から南まで長く遠いので、近くの市町村では連携するかもしれないけれど、少し離れた市町村同士での連携はなかなかないと思います。道路整備などは県と市町村全体で取り組んでいる地域をつなぐ事業ですから、課題など情報共有していければいいですね。

中西 市町村でわからないことがあれば、県用対連事務局や県の出先機関に連絡が来ることもあります。難しい案件の対応方法などですね。市町村が用対連の会員さんなので、市町村同士でやり取りというよりは、いまは県に問い合わせがあります。会員同士の横のつながりができて相談できる場があるといいかもしれないですね。

新井 そうですね。情報共有といえば、阪高サポートさんが主催している連絡調整会議はありがたいです。他県の用対連さんと集まって意見交換ができるいい機会ですから。「最近こういうことがあったんですが、どう思われますか?」と他の県の方々に事例について聞きやすい雰囲気ですし。県内でもこのような場が設けられると、他の会員さんへの情報共有にもなりますね。

ページTOPへ