閉じる

図書コレクション ~用知の泉~

まんが本「補償交渉奮闘記」のご紹介

補償交渉奮闘記

ご紹介の図書

補償交渉奮闘記

  • 平成6年3月31日

 公共事業に必要な土地を更地の状態で取得して工事部門に引き渡す。これが用地部門の最終的な仕事です。この用地部門の仕事には、権利調査・測量・物件調査・土地評価・移転補償金算定・補償金照査・用地交渉・契約・補償金支払い・不動産登記・土地管理などの業務があり、それぞれに専門家がいます。

 そして、どの部門も重要なのですが、やはり最重要なのは「用地交渉」「補償交渉」ではないかと思います。地権者様との契約があってこその用地取得なのですから。ですが、この「用地交渉」、長年かかって実施しているにもかかわらず、用地事務の説明書では、補償金算定と契約締結の間に一行「用地交渉」と記されるのみの扱いとなっています。これでは、用地初心者の方や交渉担当以外の用地部門の方たちに「用地交渉」「補償交渉」を理解してもらうことはできません。

 ところで、1960年代から2000年頃までの用地交渉は、「用地屋」又は「交渉屋」と言われる方たちが一子相伝的に実際の用地交渉の場を通じて、用地交渉技術を若手に伝えていたのです。しかし、最近はこうした「用地屋」さんたちが大量退職した上に、実際の用地交渉の場も減ってしまっています。用地交渉そのものを的確に伝える人達が消えたのに、それに代わる資料や媒体もない、というのが現在の悲しむべき状況です。

 そうした思いで、何か「用地交渉」を若者に伝えるのにいいものはないかと探していた時にふと思い出したのです。関西国際空港関連の用地取得に忙殺されたあと、少し時間ができたときに阪神高速道路補償センター(現在は阪神高速地域交流センターに統合)で「補償交渉」を紹介した漫画本を作ったことを(実はビデオも作っています)。

今回、それ(「補償交渉奮闘記」)を探しだしてきて、25年ぶりに読んでみたのです。交渉中にたばこを吸ったり、用地部長の態度がパワハラ的だったりと、時代を感じるところはありますが、全体として、現職の方たちにも大いに参考になる内容だと感じました。

 用地事務全体の流れがつかめるとともに、一行で済まされる「用地交渉」にも発展段階があること、その段階ごとに異なる注意すべき観点があること、そして、スポーツの試合にも流れがあるように用地交渉にも流れがあり、その流れをどう作り出して、ゴールにもっていくのかが見えてきます。また、用地交渉担当者に求められる資質というか「人間力」も理解していただけると思います。

 「もう二度と来るなと言われましたので、私は行けません」などという言葉を口にしない用地交渉担当者になっていただくために、交渉担当者でない用地部門の方々には気苦労の多い用地交渉担当者をどんな形でサポートしていけばいいかという観点で、それぞれ読んでいただけるとありがたいです。

 マンガ本ですから、仕事の内容をイメージしやすいですし、1時間もあれば読んでしまえます。しかし、そこらの本にはない「阪神高速用地交渉屋」の長年の経験の神髄がこれでもかと詰まっていて、得るものは多いと思います。何年か用地交渉の経験を積まれた方には、その人にしかわからない感慨も湧くのでないかと思います。

 今回、著作権をお持ちの阪神高速地域交流センターの了解を得て、当社ホームページで一般公開できるようにいたしました。公共用地取得事務に携わられている皆さんのお役に立てれば幸いです。

2019年04月05日

図書コレクション~用知の泉~ バックナンバー

図書コレクション~用知の泉~ バックナンバーの閲覧は
会員限定です。

会員登録(無料)していただくことで、
会員限定のセミナーへの参加、会員限定の情報の閲覧ができるようになります!
ページTOPへ