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セミナー・研修

第4回一般財団法人阪神高速地域交流センター/阪高プロジェクトサポート株式会社共催
講演会及び事例シンポジウム

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令和元年11月29日、一般財団法人 阪神高速地域交流センターと共催で「公共用地交渉の心構え(実践編)及び 事例シンポジウム」を開催しました。
お忙しい中、多数ご参加いただきありがとうございました。

第一部 講演会 用地交渉における反社会勢力への対応

講師:神戸H.I.T.法律事務所  弁護士 久米 知之

東京大学大学院在学中に司法試験に合格。平成15年に弁護士登録後、企業法務や交通事故案件、破産管財事件、民事介入暴力に関する相談案件など幅広い分野で活躍。民事介入暴力対策については、不当要求対策も含め一般企業への講習会のほか、各種公益社団法人・財団法人、地方公共団体や国土交通省の用地事務員に対する講演会の講師なども務める。また、日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員会の委員や、兵庫県弁護士会民事介入暴力対策委員会の委員長なども歴任。現在は、神戸H.I.T法律事務所のパートナー弁護士として活躍。阪高プロジェクトサポート株式会社主催の補償方針等検討委員会の委員も務める。


ポイント1

「行政対象暴力」とは

「行政対象暴力」とは、行政機関に対し、不正な利益を得る目的で、違法または不当な行為を行うことをいいます。平成27年に警察庁と日弁連民暴委員会が全国の自治体に行った「行政対象暴力に関するアンケート調査」からも、「過去に不当要求を受けた経験がある」と回答した自治体が約10%、また、「直近1年間に不当要求を受けた」と回答した自治体の内約10%が「不当要求の一部又は全部に応じた」と回答しています。暴力団対策法や暴力団排除条例の施行にもかかわらず、行政においては、「行政対象暴力」に屈してしまうケースは依然として少なくありません。

ポイント2

「反社会的勢力」対策の現状

「反社会的勢力」は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」と定義されています。典型的なのは暴力団、政治活動標榜ゴロ(右翼団体等)などと呼ばれるものですが、中でも代表格といえるのはやはり暴力団です。しかし、平成4年の暴力団対策法の施行、平成19年の政府指針、全国都道府県における暴力団排除条例の施行等により、その勢力は徐々に衰退傾向にあります。約10年前には全国の暴力団構成員等の人数は約8万人でしたが、現在は3万人以下となっているといわれています。しかし、平成30年の暴力団員等の検挙人員は約1万7000人であり、近年はオレオレ詐欺に代表される特殊詐欺で検挙されることも多く、引き続き厳しい目を向けていかなければなりません。

ポイント3

不当要求とは?

「不当要求」とは、一般人を基準として限度を超えた「法外」な要求をする行為のことで、属性要件と行為要件の相関関係で判断することができます。暴力団のような属性要件を備えていれば、例え金銭等の要求態様が激しくなくても不当要求となる場合が多いと考えられます。また、不当要求者の主体には「反社会的勢力型」と「モンスタークレーマー型」があり、必ずしも金銭や不当な利益の獲得を目的としない「モンスタークレーマー型」は対応が非常に困難なことがあります。「モンスタークレーマー型」の不当要求者は自らが「不当要求者」であることの自覚がないこともあることから、裁判所等の中立的な第三者を介することによる解決が必要な場合があります。

ポイント4

用地取得業務における特殊性は?

明らかな反社会的勢力等が事業用地を所有している場合でも、用地取得業務上必要であれば、交渉を避けることは不可能といえます。また、反社会的勢力等が「代理人」と称して用地交渉に介入してくる場合もあり、交渉が難航することもあります。「代理人」としての交渉にあたっては、①反社会的勢力でないこと、②交渉に当たって一切の報酬等を受け取るなど弁護士法に反する行為を行わないこと、③不当な要求等を行わないことなどを記載した委任者と受任者連名の委任状を一律に求めるなどの対応により、不当要求を未然に防ぐことが期待できる場合があります。

ポイント5

具体的な事例と解説

【志賀バイパス事案】

用地取得において、架空の建物に対して起業者が補償金を支払ってしまったという事案です。関係者が詐欺容疑で逮捕・起訴されましたが、この事件を契機として平成12年に建設省(当時)が「用地取得の不正防止対策について(平成12年12月25日付建設省経整発第58号建設事務次官通知)」が出されました。起業者側と警察・弁護士会の連携が必要と再認識する契機となった事案といえます。

【室蘭土現移転補償詐欺事件】

北海道の道道拡幅工事に伴う移転補償交渉において、室蘭土現用地課の主査が関係書類を偽造し、移転対象者の1人に当初 積算した額の2・5倍の約2500万円の補償費を支払った事件です。当該職員は逮捕・起訴され、一審は実刑となりました。控訴審においては、上司も弁償に一部協力し、本人も月々弁償していることなどから執行猶予付の有罪判決となりましたが、場合によっては起業者側も加害者となり、刑事事件の被告となる可能性があることには十分に気をつけなければなりません。

Q&A (一部紹介)

Q 不当要求相手に対して無断で録音・録画しても良いのでしょうか。                   

A一般的に無断録音・録画自体が違法となるものではありませんが、施設管理権者等から明確に禁止されている場合は違法となる場合があります。なお、事前に録音・録画を告知した方が不当要求の抑止効果を見込めることもあります。

Q 反社会的勢力との用地交渉となり、不当要求を受けた場合には、議事録や録音データは裁判所において有効な証拠となりますか。

A 議事録や録音データの内容にもよりますが、一般論として、裁判所が事実認定の基礎となる証拠として議事録や録音データが使われることも多いので、交渉に当たっては、正確な議事録を作成する、録音・録画を活用するなどの方法をとることが望ましいといえます。

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