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セミナー・研修

公共用地取得事例シンポジウム 難問解決、プロの手のうち。
「事例シンポジウム」では、事前に寄せられた多数のご質問の中から特に関心度の高い2つのテーマを取り上げ、 長年補償業務に従事する弊社の用地担当者が、 現場での経験をもとに難問解決にむけた具体的な手法や注意すべき点などを議論しました。 以下、テーマごとにポイントをご紹介いたします。

講演者(阪高プロジェクトサポート株式会社)

中坪周作常務取締役(総合補償士)

高林成光参与(総合補償士)

執行寿和用地支援第1課課長補佐(補償業務管理士/物件部門)

THEME.1 権利者多数用地の取得について

ご質問のあった事例等 1 登記名義人の相続人が多数発生している土地の対応例

ポイント1

相続関係説明図の作成では プライバシーへの配慮が必要

土地相続人が多数存在する用地の取得にあたっては必ず「相続関係説明図」を作成し、所有者となる各々の相続人の方にご説明します。
この時、説明を受ける所有者さまの氏名・住所を図へ記載するのはかまいませんが、他の相続人については個人情報保護の観点から個人名ではなく「A」「B」などと表記し、個人を特定できないように配慮する必要があります。
個人名や住所を記載すると、プライバシーに関する情報を無断で外部に漏らしたとして信頼関係が損なわれ、後々のトラブルの原因ともなりかねません。

ポイント1

事業認可がある場合は 持分取得での契約がオススメ

相続人が多数存在する土地の取得契約の場合、1通の契約書に全員の氏名や住所を記載するのは現実的ではなく、遠方の方に郵送すると紛失などの恐れもあります。
その場合、方法として持分取得による契約が有効です。持分取得は、複数の地権者が共有する不動産を個別の地権者と契約して売買する方法です。注意点としては、契約書に必ず「全員の合意を得られた場合のみ効力が発生する(前金の支払い可能となる、など)などの条件を付記すること(停止条件付契約)。
また、持分契約では一人当たりの土地価格に端数が生じますが、「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」※1 により、1円未満を切り捨てて処理することが可能です。

なお、これら持分取得による売買契約は、最終的に合意を得られなかった分については持分の収用が可能となるよう、「都市計画法」で事業認可を受けている、あるいは「土地収用法」で定める事業認定を得ているなど、いわゆる土地収用裁決の手続が可能となっていることが条件となります。

※1:国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律第2条/「確定金額に一円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てるものとする」

ポイント3

契約書を分けて作成する場合 停止条件の明示を

建物は、民法430条でいう「不可分債務」に該当するため、全員の合意が得られない限り、所有権の移転契約を結ぶことはできません。そのため、地権者が全国に分散するなどのやむを得ない事情で契約書を分けて作成する場合は、持分取得の契約と同様、「全員の記名押印がなければ、効力を発揮しない」など、執行の停止条件を必ず明示しておくのが賢明です。

ポイント4

ひとつひとつ違う土地事情 まず必要なのは事実関係の確認

登記名義人の相続人が多数発生するケースは、土地に対する意識が希薄な地方ほど多くなります。典型例としてイメージされるのは、地方の集落にある山です。それが公共事業の候補地となった場合は、その山が市町村の所有なのか、入会地のように地元住民が共同所有する山なのか、それとも実際に登記名義人欄に氏名・住所が記載されている複数の人たちが個人で所有する山なのか、何よりもまず事実関係を明らかにすることが最も大切。それに応じて適切な対処の方法を考えるようにしましょう。

ポイント5

所有者を特定できない場合
「認可地縁団体」として申請が可能に

相続人が多数にわたる土地の活用を促進するために、これまでさまざまな法律改正がなされてきました。まず平成3年には権利能力のない社団法人でも登記が可能となり、次いで平成27年には不動産登記簿などで所有者(所有者死亡の場合の相続人を含む)を特定できない土地でも、「認可地縁団体」※2を登記名義人とする所有権移転登記の申請が可能になりました。
これにより土地の権利所有者や相続関係を調べる過程で、所在不明な地権者が存在する場合は市町村に告示を依頼し、認可地縁団体として登記できるようになりました。所有者全員が確定するよう個人へのアプローチを進めるのか、認可地縁団体として登記申請を進めるのか。状況に応じて、方針を明確にすることが必要です

※2:「認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例」/集落管理の多数共有地について、一定の要件を満たす場合には、共有者全員の関与に代えて市町村長の証明をもって所有権移転登記が可能。

ポイント6

スピード・確実性・コストを慎重に吟味して 最善の方法を

ひとくちに「相続人多数の土地」といっても、事情はさまざまです。
所有者がすでに死亡し、相続人がいないケース。地権者が消息不明で、所在が明らかでないケース。相続人が外国に移住しているケース。さらには外国人配偶者が離婚して母国へ帰国しているケースもあります。
多くの場合、持分はわずか。数百円の支払いのために飛行機とクルマを乗り継ぎ、何時間もかけて現地に出向き、本人とコンタクトしなければならないケースも実際にありました。またある地権者さまは、ご本人が「外国に行く」と言い残して家を出たきり何年も帰宅せず、領事館に問い合わせても手がかりを得られず、失踪宣告が出ていないために登記はそのままというケースもあります。
支払う補償金の額に見合わない大きな出費と手間を要するケースもあり、どの方法が最もスピーディーで、確実な方法なのか、費用も含めて慎重に検討を重ねる必要があります。

ご質問のあった事例等 2 相続人多数で権利配分になかなか合意が得られない場合の対応例

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