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用地取得 達人への道

「さて今年はじめて用地取得交渉をまかされたけど、やったことがないしどうしよう…」
新人の用地職員にはつきものの悩みですね。でも心配ご無用。
本稿では用地取得交渉の手順とコツを詳しくご紹介します。

聴くを深めるvol.1 新しい研修の生み出し方

2020年10月01日 公開
聴くを深めるvol.1 新しい研修の生み出し方
  • ファースト・ペンギンの意味
  • ないものではなく、今あるものに目を向ける
  • ターゲット観察で、解を見つける

用地取得交渉の手順やコツ等を詳しくお伝えしている「用地取得 達人への道」。今回からシリーズ第5弾です。今回は新規事業である若手社員向け研修内容を、具体的に詰めていきます。田中が渡された1冊の本「The First Penguins 新しい価値を生む方法論」を中心に話が進みます。とても良い本なので、もしご興味があればぜひお手元にご準備の上、シリーズを読み進めていただければより学びが深まると思います。


鶴さんから昭和時代のペアの話を聴き終わり、少し物知りになったような気になっていた田中に、「ファースト・ペンギンだからね」と言葉を投げかけた博士。

     

ファースト・ペンギンという言葉を知らなかった田中は、取り急ぎスマホで言葉の意味を調べてみることにした。

     

「日本語でそのまま読むと、『第一のペンギン』。なにそれ?他にファーストが付く言葉というとレディ・ファーストとか、逆にファースト・レディとかかな。それぞれ意味が違うし...調べてみるしかないな」

ファースト・ペンギンの意味

『ファーストペンギン』とは、集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛び込む1羽のペンギンのこと。転じて、その"勇敢なペンギン"のように、リスクを恐れず初めてのことに挑戦するベンチャー精神の持ち主を、米国では敬意を込めて『ファーストペンギン』と呼びます。

どのWEBサイトにも同じようなことが書いてある。
実際の使い方の例としては、NHKの朝ドラ「あさが来た」で、主人公である"あささん"という女性を「ファースト・ペンギン」と称していたらしい。「あさが来た」は幕末から大正時代が舞台で、女性が学問や商いをするなんてとんでもない、という時代。そんななか、果敢にも炭鉱業に乗り出したあささんをそう表現している。
私は「あさが来た」を全部見ていたのにこの言葉は全然記憶にない...。興味がないと、なかなか頭に入っていないものだなぁ。

とりあえず、これで「ファースト・ペンギン」の意味は分かった。
ベンチャー精神の持ち主 、ということだよね。

でも博士は私にこの言葉を伝えることで何が言いたかったんだろう。
「若者が辞めていかない用地研修」は今までだれもやったことのない研修だから成功するか失敗するかわからないけれど、あなたが作り出して最初に研修の海に飛び込んでみなさい、ということなのかな。

博士って、答えを教えない、やり方を教えない、意図も伝えない。 その状態で、やらせてみる、そして遠くからそっと、でも確実に見つめている。
これって、鶴さんと同じ。博士と鶴さんって話し方が似てるよね。昭和時代にバリバリ働いてきた二人だから当然なのかもしれないけれど。

博士も鶴さんも、本人が自力で気づき、自分の中で理解して、習得するまでじっくり待ってくれている。昭和時代のペアガシラのやり方と同じ。何もせず待っているだけなのに、結果として部下=カバンモチの成長が早い。

きちんと見てくれているから、無理そうな課題に当たったときや間違った方向に行っているときはヒントをくれる。
だから今回の研修だって、自分としては壁にぶち当たっていてもう無理そう、とちょっと思っているけど、博士がやってみろと言っているからには何か答えがあるはず...。

もう一度、この研修の課題、難しいところ、ボトルネックになっている部分を整理して書き出してみよう。

ないものではなく、今あるものに目を向ける

①交渉技術は、本来なら交渉場面を通じてしか伝えられないもの。研修で教えられない。
②そもそも若者が交渉の場で盗むべき技をもった先輩がいない。
③先輩がいたとしても年齢が離れすぎていて、会話にもならない。伝えようがない。中鶴さんの話のようにペアは親子や親友のような濃密な関係が必要。しかし、それを期待できるペアを組むことが不可能。

先輩がいない、技がない、研修では昭和時代のノウハウは教えられない。
大先輩や用地交渉技術はもう希少資源となってしまっていて、令和の時代にこれを開発増産するのは難しいということが大前提。

このままでは八方塞がり。できない、で終わってしまう。
何か自分が気づいていない解決のポイントがあって、他の道から解決策=新しい研修へつながっていくはずなんだ。

じゃあ...。ないものはわかったんだから、あるものを考えよう。
今、現場にあるものはなんだろう?

先輩たちがいなくなってノウハウが伝えられていないけれど、人がいないわけじゃない。現場には若者=若手職員がたくさんいる。
ここの問題を解決すれば、膨大な資源が生まれることになる。そして、私が新しくつくり出すべき研修は、そんな若者向け。

若者こそが資源であり、研修のターゲット。
今回の主人公は若者なんだ。

もしかしたら若者の力に焦点を当てて考えてみればいいのかもしれない。
ここが手を付けてみるべきポイントだったのではないか...。

何となく糸口が見つかってきた気がする。
ちょっと食事でもして、一旦熱くなった頭を落ち着かせよう。

ターゲット観察で、解を見つける

「今日の昼ごはんは美味しく食べられたなあ」

(田中が自席に戻ると、机の上に金色の帯の付いた1冊の本が置かれている。題名は「The First Penguins 新しい価値を生む方法論」(松波晴人著・講談社発行)。)

ごはんの間に、誰が置いたのだろう?
まぁ、こんなことをするのは博士だろうな。それ以外にない。

やっと糸口が見つかって気分良く食事も終わったし、午後から調べてみようと思っていたのに。でも、博士としては、まずこれを読んでみろってことなのかも。

それにしてもなかなか分厚い本だ。300ページを超えているし。
せっかくやる気が出てきていたところをストップさせられるようで嫌だけど、とりあえず、ザッとこの本を読んでみよう。

(「The First Penguins 新しい価値を生む方法論」のあらすじ)

ある企業でイノベーションを起こすべく新しい価値を生み出す商品開発をするために集められた3人の若者-ジョージ、アート、メタ。この3人が古い体質の会社幹部にてこずりながらも、近道をせず、一つひとつ積み上げながらイノベーションに向かう姿が物語風に語られている。
そして、彼らが一つひとつ積み上げていく考え方、方法論が3人の迷い込む無意識世界の主によって示される。それが着観力、アブダクション、統合、リフレーム、メタファー、先見力、メタ認知、マインドセットだ。

博士はこの本の320ページにある図のように、着眼力  アブダクション(仮説的推論)  統合  リフレーム  メタファー  先見力  メタ認知  マインドセットという流れで考えてみろ、と言いたいのだろうか?

それなら、私には考えることが多すぎて荷が重すぎるし、今のところ何も思いつかないので一旦置いておいて...。気になったのは、この開発物語の出発点ともいえる人間観察のほう。

①男女2人で食事をしたりお茶したりしているのに、お互いちっとも話をしない
②本屋に行くと自己啓発本がたくさん並べられている
③働く女性に話を聞こうとしたら、同僚女性の悪口を延々と聞かされた

男女が食事をしたりお茶をしたりしているのに会話をしない。
確かに、ランチに出かける定食屋さんとかを思い出してみると、店内はとても静か。どの席も埋まっていて、私のように一人で来ている人は少数派だというのに静かなんだよね。

制服が同じだったり同じICカードを首からぶら下げたりしているから職場の上司や同僚と来ている人が多そうなんだけど、話し声はあまり聞こえない。みんな俯いてスマホで何かやり取りを続けていることが多い。一緒に座っているのに、みんな頭の中は別々ってことなんだろうか。

今の若い人がどういう状態なのか?
なぜ、若者はそうなるのか?
そうした若者にはどういう潜在的欲求があるのか?

研修開発のためには、そのターゲットを知らなければならない。
そのためにはもっと観察を、と博士は言いたいのかもしれない。


博士からまた新しい本を課題図書のように与えられた田中。
この「The First Penguins 新しい価値を生む方法論」には、新規事業の立ち上げる過程(企画提案から実現まで)がストーリー仕立てで書かれています。

田中が気になった若者観察の部分について、これからもう一度深く読んでみることにするようです。次回は、この本に書かれている内容について、もう少し詳しい考察が始まります。お楽しみに!

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