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用地取得 達人への道

「さて今年はじめて用地取得交渉をまかされたけど、やったことがないしどうしよう…」
新人の用地職員にはつきものの悩みですね。でも心配ご無用。
本稿では用地取得交渉の手順とコツを詳しくご紹介します。

用地屋は1日にしてならずvol.1 〜用地屋の心得とは〜

2019年06月03日 公開

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前回の用地の達人では、序走編として相手の話をじっくり"聴いてくる"ことについてご紹介しました。
私たちに求められるスキルは『説得技術』ではなく、『聴き方や共感力』が大切なスキルでしたね。
今回から8回にわたり、いつもと違うドラマ仕立てで用地屋の心得を説く「用地は1日にしてならず」を連載でお届けします。


用地屋には用地屋の身体と心がある。

"また、博士の小言が始まった..."
田中は聞き耳を立てていた。


博士は田中の上司のミスター用地部長。なぜかみんな昔から部長のことを"博士"と呼んでいる。
さっき、田中は先日開催したセミナーアンケートの結果をまとめて供覧書を作り、部長の机に置いてきたのだ。

今回のセミナーは、「補償理論の考え方」「補償理論のもとになっている哲学」などに焦点を当てた講義だった。

基礎がきちっと固まっているから応用動作ができる。応用動作の一つを覚えてたところで砂上の楼閣にすぎん。

新しい事態が生じれば、その都度、誰かに応用動作を教えてもらわないといけない。でも、今や教える人もなく新しい事態に対処できない。だから、基礎から学んでもらうしかないと、博士が言い張って決まった講義だった。

博士はいつも口酸っぱく部下に言っていた。

「急がば回れ」
「困難なものから先にやれ」
「毎日基本を積み上げろ」
Let's try
「会社の仕事に正解はない、正解を作るのが仕事」

安易が大嫌いなのだろう。

だから、田中は供覧書を置いたときから、何か小言が始まるだろうなとは想像がついていた。


今すぐ現場で使えるノウハウが欲しい!!


セミナーのアンケート結果は散々なもの。

"今すぐ現場で使えるノウハウを教えてほしい、今回の講義では仕事の役に立たない。"

というものだったのだ。

博士には、長年用地業務をやってきて得た信念があるらしい。
それは...

用地屋には用地屋なりの身体と心がある。

そういう身体と心ができて始めて用地屋と言えるし、

一生、その完成を目指すのが用地屋の使命。


...まあ、"用地屋"という言葉にこだわる段階で、最近の用地業務担当者にとって、厳しいものだろう...。

 アンケート結果をみた博士の愚痴が始まる...

皆さんは"どうしたら今すぐ、何の努力もせずに、イチローのようなプレーができますか?""今すぐ、大谷翔平選手のように160kmの剛速球が投げられる方法を教えてください"と言っているように見えるなぁ。
最近の若いもんは...と言いたくないが...

問題の連鎖の中で核となる問題を探り当てるには?



博士の愚痴は更に続く...

スポーツ選手をみれば誰でもわかる。彼らがそのスポーツが必要とする身体と心を手に入れるために研究と鍛錬と積み重ねていることを。
確かにイチローは天才なのであろうが、昔からイチローだったわけではない。
日々の努力も超人的なものであろうし、孤独な自己の心との戦いも苛烈を極めたであろう。その鍛錬と自己修正の努力の結果が「イチロー」という結晶を生み出してきたはずである。

何でも正解があって、マニュアル通りやれば、その正解にたどり着けると思ってはいないか。

小さい時からの教育なのか、あらかじめ正解があって、その解法を習得するような訓練ばかり受けているから、

"今起きている事象の何が問題なのか?" という出発点となる問いが作れないのではないか。

問題の連鎖の中で核となる問題を探り当て、知恵の輪のごとく、核となる問題から一つ一つ問題を解きほぐしていく。 そうすることで初めて解決(solution)が見えてはずなのだが...。

用地交渉の核となる問題は、「補償理論」や「用地事務」に精通することでも、マニュアルどおりの交渉場面対応に習熟することでもない。
用地屋の身体と心を日々作り上げ、用地屋と呼ばれる、野球で言えば一軍登録できる、相撲でいえば十両以上の力士と言われる人たちになることだ。
この身体と心があって初めて「勝負」や「対戦」ができるのだ。

では、いったい用地屋の身体と心とは何なのか?

次回、『用地屋は1日にしてならずvol.2 〜用地屋の笑顔論〜』をお届けします。

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