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セミナー・研修

特別対談 関西の街の発展に貢献した「おおさか東線鉄道事業」の用地取得業務を振り返る

関西の街の発展に貢献した
「おおさか東線鉄道事業」の
用地取得業務を振り返って

2019年3月に新大阪駅から八尾市の久宝寺駅間を結んで開業した「おおさか東線」。"平成最後"の新線となりました。
城東貨物線の施設や用地を活用しながら複線化・電化を行い、駅を新設して開業した路線です。
その用地買収業務を大阪外環状鉄道株式会社(以下、OSR)様からご依頼いただいたのは、2013年でした。当社はまだ設立されておらず、母体となる部署が阪神高速道路(株)の用地センター内にいた時代のことでした。今回は、ご依頼いただいた経緯や満足度について、OSRの野田様に当社の中坪がおうかがいしました。

野田 剛 大阪外環状鉄道株式会社 調整部

野田 剛 
大阪外環状鉄道株式会社 調整部

1974年大阪市土地開発公社入社。必要な公有地となるべき土地等の取得及び造成その他の管理等の業務にかかわった後そのキャリアを活かし、財団法人大阪市都市建設協会、財団法人都市技術センターを経て2013年4月、大阪外環状鉄道株式会社に入社。現在、調整部所属。

中坪 周作 阪高プロジェクトサポート株式会社 専務取締役

中坪 周作 
阪高プロジェクトサポート株式会社 
専務取締役

補償業務管理士(7部門、総合補償部門)、宅地建物取引士、1980年阪神高速道路公団入社。用地部門に配属後は、全線にわたる用地の評価、神戸線・湾岸線・京都線の土地収用に幅広くかかわる。30年余りにわたって培った用地取得のノウハウを次の世代へ伝えようと、2016年10月、阪高プロジェクトサポート株式会社を立ち上げ。現在、専務取締役

阪高サポートを選んだのは、
長年培った経験値への期待感

■おおさか東線路線図

おおさか東線路線図
  • 建設主体 大阪外環状鉄道株式会社(第三セクター、第三種鉄道事業者)
  • 運営主体 JR西日本、JR貨物(共に第二種鉄道事業者)
  • 整備延長 全区間:新大阪〜久宝寺間(約20.3km)新線建設区間:新大阪〜JR淡路間(約3.2km)
  • 複線化区間 JR淡路〜久宝寺間(約17.1km) 電化区間:新大阪〜久宝寺間(約20.3km)
  • 旅客駅 14駅(ホーム長8両対応)

総合的なサポートで課題を解決し、計画通りに業務を遂行

中坪:この事業では工程を確実に守るという最も軸となる部分を確実に遂行するため、用地取得マネジメントを導入させていただきました。スピード感を持って展開するために、リスクを洗い出し、体制を組み立て直しました。どこが効率化できる部分なのかを導き出したり、計画と実行差分析によって早期に問題を見つけて確実に成果につなげる方法を考えたりと、総合的な管理を行って参りました。この点についてはいかがでしたか。

野田さん:その時点、その時点の問題点や解決策を提示いただくことで、対応が後手に回ることなく早期に処理できました。また毎月開催される工程管理会議で進捗状況が報告されるので、全体が把握しやすかったです。用地買収は複数の案件を同時に並行して処理しているのでそれぞれの進捗を共有したり整理したりするのが大変だったのですが、同会議により、全体の進捗が把握できるようになりました。

中坪:用地取得マネジメントのメリットを感じていただけたのは何よりでした。そのほかにも、起業者経験を活かした権利者間の権利関係の整理や、残案件の用地交渉も担当し、任意契約もさせていただきました。当社の用地交渉はどうだったでしょうか。

野田さん:収用案件は協議も膠着状態にありました。起業者である我々との交渉ももちろんありましたが、土地所有者と定期借地権予約者との関係も複雑でした。建物に住んでいる者が誰なのかも分からない状態でした。そうした中、その権利関係の確定に必要な資料や情報を収集いただけたので、後の収用手続きや補償金の算定業務に大いに役立ちました。それが思い出深いですね。そのほかには、収用事務について、助けられたという思いがあります。わたしも長年にわたって用地買収をしてきたのですが、収用事務は滅多に経験するものではありません。収用手続きの経験のある皆さんに補助参加してもらったことで、円滑な運びができました。阪神高速さんには収用事務に特化した人材も配置されていたので、特に審理の準備や想定問答の作成、審理参加、現地立会いなど非常に助かりました。

中坪:権利をどう確定させるかは、綿密な調査や慎重な対応が必要なので、わたしたちがお役に立てたようで何よりです。また、土地の利用状況を物件の移転補償の関係でどう評価するかというのも難しい問題ですが、収用事案で問題になった駐車場についても自己使用と他者賃貸の区分、他者賃貸については一時的な利用なのか、営業体としての経営なのか、契約解除の難易度はどの程度なのかを丁寧に調べました。その結果、本件では、残地に未舗装の紐で区画された駐車場は一時使用と認定しました。その関係で建物補償を構内再築と認定して裁決申請していただき、収用裁決もその通りに認定されたと記憶しています。

野田さん:担当してくれた皆さんの経験値が高いことが何よりでした。収用事務以外にも、測量業務でも助けられましたね。測量業務は現地測量というより、実はその前段階となる権利者や関係機関との調整業務が一番手間と能力を要請されるところなのですが、この点においても阪神高速さんの担当者の経験値が高く、事前にきちんと根回しを行って円滑に処理をしていただけました。

中坪:測量業務は用地買収だけでなく、残地売却のための境界確認や官民境界明示、里道水路の大阪市からの払下げ、廃道処分手続なども手伝わせていただきましたね。わたしたちがこれまで積み重ねてきた経験と、こまめに現地に足を運んで収集したことがうまく作用し、課題となっていた部分を解決できてよかったです。

2013年大阪市城東区鴫野西付近を現地視察するスタッフ

2013年現地を視察するスタッフ

2019年大阪市城東区鴫野西付近を再訪したスタップ

2019年現地を再訪したスタッフ

「人材の心配なく、合理的、経済的な用地取得ができた」

中坪:個別の業務だけではなく、用地取得のあらゆる局面にノウハウを持って対応できるのが当社の特色であると考えています。その点で使いやすかったこと、逆に使いづらかったことはありましたか。

野田さん:用地買収業務を実施しようと思うと、土地測量、物件調査、交渉業務と、それぞれの分野の人的配置をする必要があります。一つの組織の中で体制を組もうとすると、そ れなりの人件費もかかりますし、業務の進捗状況によってはロスも生まれてきます。そして大きな問題となるのは、採用した人材の能力によって成果が大いに左右されることですよね。人材の能力を最初から判断するのは難しく、実際にやってみないとわからないとなると、計画的に進まず大変です。阪高サポートさんのように、さまざまな専門能力を持った人材を備えた団体に委託することで、合理的、経済的に買収を行うことができたと思っています。 一つ反省点を挙げるなら、どれくらいの業務量があるか当初は読めなかったこともあって単価契約の設定とさせていただきました。そのため、当然、受託者側でもそういう間接業務が増えたわけですから、もう少しきちんと詰めて総価契約にしておくべきでしたね。指示書や成果品が膨大な数になり、そのチェックなどの間接業務に私たちの大きな労力を割かなければならなかったことですね。

中坪:今回は非常に難しい残案件であったこともあり、どういう仕事が発生するか、始まりの時点ではお互いに予想できないところからスタートしましたからね。わたしたちも出来ることはすべてやらせていただこうと提案していきましたので、その分、間接業務が膨らんだともいえます。効率的な業務遂行のために、今後は見直していきたいと思います。

野田さん:とはいえ、結果としてほぼ予定通りに進み、おかげさまで2018年度末に開業できました。

中坪:開業の日が迎えられて、わたしたちも本当にうれしく思っています。「おおさか東線」は全線供用されましたが、現在でもまだ問題として残っている用地案件はありますか。

野田 剛 大阪外環状鉄道株式会社 調整部

野田さん:収用案件は、裁決後土地明渡も完了し、工事も終わりました。ただ、権利者さんが増額訴訟を提起し、ずっと係争していました。それがなんと先日和解でき、といいますか、ほとんど当方の主張どおりの和解となり全ての収用案件が終了しました。また継続中のものは、工事完了後に不要とな った土地の対応ですね。これについては、今、順次売却手続きを進めています。

中坪:業務全体を振り返って、わたしたちの働きについて感想をいただければと思うのですが。

野田さん:阪高サポートさんは阪神高速時代を含めると、用地業務を50年以上行ってこられたわけですよね。そして今は民営化から分離独立されて公共用地取得のあらゆる局面を総合的に支援する企業になられているわけですよね。このような公共用地取得の全局面に対応する用地専業の企業はあまりないと思います。

関西の街の発展に貢献する形で
業務が終了

中坪:わたしたちも無事に「おおさか東線」が開業したことは、本当にうれしく思っています。先日、実際に路線を往復乗車してみたのですが、乗車されるお客様の多さ、沿線各駅で開発が進んでいること、路線各駅の乗継ぎの豊富さを実感しました。主要な駅と結びついているので、今後もより一層、街の発展が見込めそうですね。支援させていただいた事業の効果に、喜びを感じています。鉄道のネットワーク化が、街に大きな効果をもたらすこともわかりました。感慨深いです。

野田さん:「おおさか東線」の全線開通で大阪圏の鉄道の利便性は大きく向上しましたね。

中坪:わたしたちは、起業者、用地提供者、公共事業の受益者が"三方よし"の関係で、幸せになるインフラづくりを目指しています。今後も起業者さまが考えておられる目標や計画をそのとおり成し遂げられる、責任ある仕事をしていきたいと思っています。今回は本当にありがとうございました。

取材協力

大阪外環状鉄道株式会社
〒541-0042
大阪市中央区今橋二丁目3番21号
URL :http://www.osr.co.jp

(取材日:2019.7.11)

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