とある市の用地課の新人、緑山さん。用地の業務も初めてで、勉強の日々です。
前回に引き続き、「所有者の特定」の様々な課題、またそれに対応する新たな制度等について学びます。

とある市の用地課の新人、緑山さん。用地の業務も初めてで、勉強の日々です。
前回に引き続き、「所有者の特定」の様々な課題、またそれに対応する新たな制度等について学びます。
さて、一息ついたところで、今回は ①「特定不能土地等管理者」と、②「所有者不明土地等管理者」についてお話していくよ。
わぁ~・・・、似たような用語でどちらも"土地等管理者"ですが・・・?
そうだね、どちらも、土地(②は建物もあり)のみについての管理者の選任制度であることは間違いないよ。最近新たにできた制度なんだ。
①、②は新しく増えた制度なんですね。いままでも、たしか「不在者財産管理人」や「相続財産管理人」という制度がありますよね。
そうだなぁ、"土地等管理者"の話に入る前に、既存の制度についても触れておこうか。緑山さんがいうように、これまでも財産管理制度自体はあってね。
「不在者財産管理人」や「相続財産管理人」は言葉のとおり、個人の財産のすべての管理をするために家庭裁判所で選任してもらうんだよ!
う~ん・・・?!上島さん、それだとどちらも同じように思えるんですが・・・。
「不在者財産管理人」と「相続財産管理人」はどう違うんですか?
分かり易くいうとね、
「不在者財産管理人」は、その所有者が現在死亡しているか否か、どこに居住しているか否か、全く不明な場合に選任してもらい、
「相続財産管理人」は、その所有者が死亡していることが戸籍等ではっきり分かっているが、相続人が(配偶者、子、親、兄弟姉妹を探しても)全く見つからない場合や、相続人全員が相続放棄している場合に選任してもらう制度なんだよ。
なるほど、不明になっている状況が違うんですね。
「不在者財産管理人」と「相続財産管理人」は、選任手続等、結構大変だと聞いたことがありますが・・・。
そうなんだよ。この〔すべての財産を調べて管理する〕というのがとても大変なんだよね。管理人を選任するまでも時間がかかるし、選任された管理人が改めて相続人探しや債権者への公告をしたり・・・。
だから、特定の土地・建物の管理に特化した財産管理制度が新たにできたんだよ。特定の土地・建物のみについて管理してもらい、売買等の用途が済めば、そこで管理人の役目は終わり、としてもらった方が早くて便利だよね。
だから「相続財産管理人」と区別して「土地等管理者」って呼ぶんですね!
そのとおりだよ!そして選任してもらう裁判所も「土地等管理者」については地方裁判所で選任することにしたんだろうね。
管理の対象となる財産の範囲と、選任する裁判所が違うんですね。
ええっと、それで、「土地等管理者」には①と②の2種類あるっていう話は・・・?
そうだった、その話をするんだったね!
一覧図にも掲載した①「特定不能土地等管理者」は、令和元年5月に制定された〔表題部所有者不明土地法〕に基づく管理者のことなんだよ!
所有者等の探索を行っても、所有者等を特定できなかった表題部所有者不明土地(所有者等特定不能土地)については、裁判所の選任した管理者による管理が可能となったんだ。
ええっと、「表題部所有者不明土地」っていうのは・・・?
うんうん、聞きなれない用語だよね。まず「表題部のみ登記」された土地というものがあってね、これは所有権の登記がされていないんだよ。
表題部のみ登記されている登記記録は・・・たとえばこれだね(↓)。
▽ 表題部のみ登記された登記記録証明書(例) ▽

所有権の登記がされていないので、前回みた登記記録とは違って「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の欄がなくて、こんな場合には、表題部の最後段に「所有者欄」が設けられているよ。
ほんとうだ、表題部の項目が一行多い!
あれ?でも、「氏名」しか書いてないですね。
そうなんだよ!旧土地台帳と旧登記簿の一元化をしたときに、旧土地台帳に合致する所有権等の登記記録がないものは表題部のみを作成し、そこに所有者欄を設けて、住所、氏名を記載したんだ。でも、この欄の記載内容が統一されていなくてね。
たとえば
・「氏名」だけで住所の記載がない
・「(個人名) 他○名」となっていて他の共有者が分からない
・「字名(あざめい)」だけで正確な住所または所有者名がわからない 等
まったく所在が確認できない所有者が多く、所有者不明の原因になっていてね。だから、令和元年5月に新しい法律ができたんだよ!
そういった経緯があったんですね!その法律はもう施行されているんですか?
令和2年11月に施行されていて、すでに次のように、法務局の職権で"表題部所有者として登記すべき者がない"旨の登記がされているものもあるよ。
▽ "所有者として登記すべき者がない"証明書(例) ▽

この登記事項証明書と別途記録書(手続番号に基づく法務局に保管の「所有者特定書」)を添付して、地方裁判所に「特定不能土地等管理者」の選任申立をするんだよ。
すでに活用されているんですね。
もう一つの ②「所有者不明土地等管理者」は?
もう一つの方は、令和3年4月に一部改正された新民法(民264の2~民264の14)に基づくもので、令和5年4月から施行される予定だよ。
こちらは、「権利部(甲区)」に所有者の記載があるが、長年の相続登記をしていない等の理由で登記記録からは所有者が分からない場合、また所有者が分かってもその所在が不明の場合にも適用になるよ。また、所有者不明の「土地」だけでなく「建物」にも、さらには管理をしっかりしていない管理不全な土地・建物にも適用されることになっているよ。
「所有者不明土地等管理者」は建物も適用されるんですね。
表題部だけの所有者不明関係は「土地」に限定されているんですよね。
そうだね!そもそも古い表題部だけの建物登記簿(登記記録)はほとんどないと思うよ。まれに建物登記簿が残っていても、かなり古い記録だから建物自体はすでに存在していないと思われるので、問題になることはまずないだろうね。
そうなんですね。
一度にいろんなことを伺ったので今回のお話を確認したいんですが・・・
まず、所有者特定にはいろいろな課題があって、登記記録から特定できない場合が多数あることが分かりました。
そして、その課題を解決していくために、様々な制度があるんですね。
既存の財産管理制度
・所有者が所在不明の場合 → 不在者財産管理人
・相続人が不明、相続放棄等の場合 → 相続財産管理人
△ 個人の財産のすべてを管理するため、手続に時間がかかる
新たに追加された制度
・"表題部不明土地"の場合 →特定不能土地等管理者
・所有者不明、管理不全等の土地・建物の場合 →所有者不明土地等管理者
◎ 特定の土地(建物)の管理に特化した制度なので、手続時間が短縮
比較すると、こんなかんじでしょうか。
うんうん、そのとおりだよ!
所有者不明関係については、なんとなく分かってきました。
ただ、相続登記の義務化や相続した土地の所有権放棄など、新しい制度がたくさんできているとのことなので、また詳しく教えてくださいね。
そうだね。全体の流れを説明し終わったら、それぞれじっくり教えるよ!
はい、よろしくお願いします!
用地事務に関わる登記手続について解説!コラム「登記しよう!」シリーズです。とある用地課の新人、緑山が用地取得の各ステップで必要となる登記手続に関して、ベテラン職員上島さんに教わっていきます。
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とある市の用地課に異動してきた新人、緑山さん。用地の業務も初めてで、勉強の日々です。前回、登記記録の取得方法や見方を学び、現在の所有者が読み取れるようになったはずですが・・・? 大阪市北区の補償コンサルタント 阪高プロジェクトサポート株式会社です。公共用地取得,用地買収,用地交渉