- 拒否反応に隠された相手の気持ちを見抜く
- 勝手な解釈は不要、自分の気持ちは横に置いておく
- 相手が変わると信じて話を聴く
「聴く」=相手が自力で考え解決に至るまで関わり続ける覚悟を決めること、と本から読み取った田中。博士が単に言葉を耳で受け止めるだけではないよと言っていた意味がやっとわかってきました。そして、用地屋としては、解決まで関わる=権利者さんの方が移転を決意するまで寄り添う、という意味が含まれています。なかなか深く、重い言葉ですね。
「聴く」=相手が自力で考え解決に至るまで関わり続ける覚悟を決めること、と本から読み取った田中。博士が単に言葉を耳で受け止めるだけではないよと言っていた意味がやっとわかってきました。そして、用地屋としては、解決まで関わる=権利者さんの方が移転を決意するまで寄り添う、という意味が含まれています。なかなか深く、重い言葉ですね。
話の重かった第27話の次からは、読みやすい軽い話が続いていた。
田中のページをめくる手も快調だったが、ふと手が止まったのは第32話だった。
<第32話:拒否する人とどう関わるか>
人はみんな共感されることを求めています。......けれども、ある種の複雑な傷つきのある人は、共感されることを嫌悪します。見るからに傷ついている人に「傷ついたんですね」というと、「何ですか!馬鹿にしてるんですか!」と怒り出すことがあります。見るからにつらそうな人に「つらいんですね」というと、「分かったふうなことを言わないでくれ!」と怒られることがあります。
それではこうした人たちは、本当に他者から共感されたくないと思っているのでしょうか?それは誤解です。
......こういう人たちも、心の底では共感を求めているものです。自分がある種の感情を抱いていることを認めにくかったり、自分の苦しみをまだ他者と共有する準備ができていなかったりするだけだと思います。
そういえば博士も言っていた。
「怒ったり話し合いを拒否したりする権利者さんは、移転しなければならないという事実に向き合えていないことを認めたくなかったり、移転についてまわる家庭内の不和をどうにかする準備ができていなかったりする。それをごまかすために怒って帰れと言うんだよ」
じゃあ、怒りや拒否反応で返されたときは、どういう対応をすればよいんだろう。
見るからに傷ついている人に「傷ついたんですね」と言葉をかけて、......さらなる傷つきを引き起こしてしまったような場合、どうしたらいいのでしょうか?
その人は、自分がいま傷ついていると認めること自体を屈辱と感じているのかもしれません。しばらく後に「あなたは傷ついたとは言われたくないんですね」といった言葉をかけると、落ち着いて聞いてくれることもあります。(相手の)共感されたくない気持ちに共感するのです。
見るからにつらそうな人に「つらいんですね」と言葉をかけて、......怒られてしまった場合、どうしたらいいのでしょうか?
......拒否されてしまったら、そのことを受け容れることです。そして「あなたのつらさは他の誰にも分からないね」と言ってみるとよいかもしれません。
なるほど。共感されたくない=拒否する気持ちに共感していくということか。
用地交渉の現場でこのようなことがあった場合、私たちが口にするかどうかは別として、「『そんなに移転を急かさないでくれ、事情をもっとよく理解して配慮してくれ』とおっしゃっているんですね」と理解するということ、と言えるのかな。
確かに、用地担当者と博士のやり取りで、それに近いことを言っているのを聞いたことがある。
「権利者さんから『もう二度と来るな、顔も見たくない』と面談を拒否され、追い返されました。とても、すぐに再訪する気になれません。どうしましょう」
「それは権利者さんが『私を大事に扱ってくれ』と叫んでいるんです。怒りではないんですよ。だから、追い返されても追い返されても、『あなたは私の大切な人ですからこれからも伺います』、と権利者さんに伝えなさい」
そのとき、側で聞いていても『二度と来るな』が『大事に扱ってほしい』と聴きとれるのか不思議でしょうがなかった。
けれど、拒否=心の底では共感を求めているけれど準備ができていない状態だと、この本にも書かれている。だから、拒否する気持ちを受け容れて、あなたが大切であると伝える、というのはあながち間違った対応ではないということなんだなぁ。
<第34話>
ある男性は、妻からしばしば「お金が足りないの、節約してちょうだい」と言われていました。そしてそう言われると、稼ぎが少ないと責められているような気がして、とても嫌な気持ちになるのでした。
こんな一生懸命家族のために働いているのにどうしてそんなことを言われなくちゃいけないんだと腹が立ち、即座に「お前が無駄遣いしているからだろう! なんで俺が節約しなくちゃいけないんだ!」ときつく言い返しました。
......あるときこの男性は知人のカウンセラーからのアドバイスを受けて、試しに妻の視点に立って、ありのままに妻の感じているように感じ取るつもりで話を聴いてみることにしてみたのです。
そうすると、......いつもと同じ妻の訴えの背後に、子どもたちや自分たちやそれぞれの両親の将来について、妻がとても不安に感じていることが初めて伝わってきて驚いたのです。
なぜ、妻の立場に立てば妻の思いが分かるのに、妻の立場に立たなければそれが見えなくなるのだろう。
これは相手の立場に立つという前に、一旦、自分に沸き起こった感情を横に置いて、『妻がどんな思いでこの言葉を自分に投げかけたんだろう』と真剣に考えたときに初めて見えたということなのかもしれない。
もしかして、相手の立場に立つのも大切だが、「自分を横に置いておく」ことが大切なんじゃないだろうか?
用地交渉でも、起業者として説明しておかないといけないことばかりを言わず、それを一旦横に置いておく。そして、権利者さんからよく言われる「もっと高い補償金を」という言葉の奥に耳を傾けることができれば、移転に際して権利者さんや権利者さんの周りの人がいかに不安に思っているかが見えてくる。
場合によっては、権利者さんが移転に立ち向かう準備や勇気ができていないということが見えてくる、ということなのかも。
特に日本人の特性として、ちょっと強く言われると非難されたと勘違いしがちだ。両親や学校の先生、上司から「なぜそんなことをしたのか」と問われると、「だめなことだったんだから謝りなさい」と言われている、と勝手に解釈してしまうことが多い。
実は権利者さんは怒っていないのに、言葉をかけられた側が反射的に「怒られた、もう交渉に行きたくない」と思い込んでしまっているだけかもしれない。
<第38話:調教名人は罰を使わない−−相手を信頼すること>
自分がフラストレーションを感じるからという理由で相手の行動を変えようとすると、たいてい、その相手は反発します。その結果、逆に相手の行動は変化しにくくなります。
むしろ、相手の行動を変化させようとする努力を放棄し、相手の行動を受け入れたとき、不思議なことに相手の行動が変化し始めるということは実によくあります。......われわれにできるのは、まずは「相手を信頼する」ことです。
変わるか変わらないかは相手が選ぶことなのです。われわれに相手を変えることはできないのです。
説得しようとすると、逆に反発される、ということ。
これは経験的に納得できる。
でも、なぜ「相手を信頼する」ことで相手の行動が変わることがあるのだろうか。
博士もいつも同じような話をしている。
「どんなに事業に反対している人であっても、移転を拒否している人であっても、何度も会って話を聴いているうちに変わってくれる。私たちにできるのは相手が変わってくれると信じて話を聴くこと。それがすべてだ」
博士もこの本も、なぜ人が変わってくれるのか説明がない。経験的に感じたことなのかもしれないけれど、経験のない私がすでに納得できていないし、この話を聞いた若い人たちが納得して権利者さんからの怒りを受け止め、相手を信じて待つことができるのだろうか。拒否されても拒否されても...会いに行けるだろうか。
この本を最後まで読んだときに、その答えがわかっているといいなぁ。
創元社『プロカウンセラーの共感の技術』(杉原保史・著)に書かれていることと、博士が日常的に口にしていた交渉術が同じであることに驚きましたね。
とうとう次が最終話です。まだ本の内容に「納得できない」と感じている田中ですが、最終話では何か次に進むヒントを得られるのでしょうか。ぜひ田中の奮闘を見届けてくださいね。
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