- 流れを止めない努力で成果を出す
- 権利者さんの心を大切にする
権利者さんとの雑談から本質的な解決に持っていく交渉術を知って唸ることしかできなかった田中。今回はそんな一見すると時間を際限なく使っているような交渉の進め方をしながら、上司を納得させる数字上の成果をどうやって残していくか...という勤め人として避けては通れない問題への対処法を鶴さんから教えてもらいます。

権利者さんとの雑談から本質的な解決に持っていく交渉術を知って唸ることしかできなかった田中。今回はそんな一見すると時間を際限なく使っているような交渉の進め方をしながら、上司を納得させる数字上の成果をどうやって残していくか...という勤め人として避けては通れない問題への対処法を鶴さんから教えてもらいます。
「権利者さんの本当の幸せは何か考えよ」という、いくらでも時間を使おうと思えば使えるような交渉術をしてきたという鶴さん。喫茶店でスポーツ新聞を読む話でも感じたけれど、すごく悠長な感じがして、昭和時代ってのんびりしていたんだなと思う。
でも、今ほど進捗率が〜とかいわれなかったとしても、さすがに上司たちからは数字で結果を出せと言っていたはず。あれだけ高速道路がどんどんつくられていた時代なんだから、いつまでも時間をかけていいなんていう訳ない。
鶴さんが覚えているか、当時に意識していたかわからないけれど、時間的なノルマがどうなっていたのかも聞かないと。そうでなければ今の現場に昔のやり方を落とし込めるかどうかわからないしね...。そのあたりもしっかり聞いていこう。
「昭和時代の交渉術を聞かせてもらって、ほんとに用地屋の仕事って深くて大変だなと思ったんですが、時間的なノルマというか、決められたものってなかったんですか?」
「そりゃもちろんあったよ。職場の幹部の人たちは自分の時代に数字がほしい。もちろんそうだったし、契約の進み方を見られていたよ。特に用地交渉を知らない幹部の方々ね」
やっぱりそうなんだ...。
「だから、大変そうだなという権利者さんには小まめに顔をだし、逆にすぐに契約できそうなところには全然訪問しなかったよ」
「どういうことですか?」
○難しそうな権利者さんから回る
○権利者さん叱られたり怒鳴られたりしたら、1週間以内に必ず再訪問
○早く契約したいという権利者さんのところには1ヶ月以上行かない
こういうことを実践していたね、と鶴さん。
当たり前のようだけど、めっちゃ辛そう...。
「改めて、用地事務の最終目的は何だったか考えてほしい」と鶴さんはいう。
用地事務の目的は、まとまった更地を工事部門にできる限り早く手渡すということ。すぐ契約できる人を優先して用地交渉すれば、歯抜けだけどそれなりのまとまった更地ができる。けれど半分くらいまでスルスルと交渉が進んだら、その後はピタリと契約が止まってしまう。この状態から契約が困難な人たちとイチから交渉すると、この段階で全く何も進まない空白のゼロの時間ができてしまう。難しい交渉は結局ズルズルと予定より遅くなるから、難しい人ほど早くから手を付け、時間をかけて用地交渉をしておくのが目標達成までの最短の道なんや。
ここまで一気に話した鶴さんは、息を深く吸いながら話をまとめに入った。「不思議なことに物事には『流れ』がある、『慣性の法則』といわれるやつやな」という。
「何にでも『流れ』という目に見えないものがあって、一度止まると動かなくなってしまう。すぐ契約できそうなところは置いておき、難しい交渉を進めながら合間合間で契約できる人たちとの交渉を組み入れる。そうやって用地取得進捗率が80%位までは止まらないように、ゼロが続かないように、必死で『流れ』をキープする。これこそが用地屋がやるべきことなんや。これで順調に進んでいるように見えるし、まとまった更地も仕上がってくる。上から何かを言われることも減るっちゅうもんや」
なるほど〜!
よくできた交渉の段取りだなぁ。やっぱりあれだけ高速道路をバンバンつくってきた世代だからこなしてきた数が違うし、実践的だ。
「だけど、この面倒なところを先、すぐできそうなところは後、というやり方にはもう一つ大事な要素があるよ」
「と、いいますと...??」
「権利者さんの心理って、どういうものだと思う?」
早く契約できそうな人も、ものすごく難しそうな人も同じだ、まぁ僕も自分が権利者じゃないから本当のところはわからないし自分なりの解釈やけどな...と前置きして鶴さんは話し始めた。
「いつも地権者の方は『俺(私)を大事に扱ってほしい』と思っているという前提に立って交渉を進めている んや。早く契約したいと思っている人は自分が大事に扱われたいから、交渉に来る僕らに対して物分り良く接してくれる。逆に、大事に扱わないと痛い目に遭うぞと警告してくる人は、『だから大事に扱えよ』とわかりやすく言ってくれてるんや」
なるほど。そういわれると状況が目に浮かぶようだ。私にもわかる気がしてきた。人間てそういう側面が強くある気がするよね...。
早く契約しそうな人と難しい人と同じ対応でいいと思うか?と鶴さんは続ける。
ハードルが低い
↓
交渉に行く側は心理的負担が少ないからすぐに再訪できる
↓
すぐに再訪する=交渉ペアが何も努力せず何も考えていない=権利者さんをぞんざいに扱っている証
↓
「難しい問題なので検討に時間がかかります。少し時間をいただけませんか」
↓
再訪までに時間をあける=その間は権利者さんのことを考えている証
↓
大事に扱われている感!!
ハードルが高い
↓
何度も通って、心理的ハードルを徐々に下げてもらう
↓
情も信用も権利者さんの本心を探るために必要、だから雑談・世間話をする
↓
回数を多く通う
↓
大事に扱われている感!!
「『時間』というのは不思議なものでね。さっきの流れの話ともリンクするけど、物理的に長いからどうだ、短いから順調、とかだけでは語れない深いものがあるな」
「そういうもんですか」
でも、しんどくて辛い思いをする交渉に何回も行くなんて、辛そう!
辛い交渉から離脱して職場を辞める人が増えて、権利者さんと信頼を築き上げるどころじゃなくなりそうなんだけどな...。
「権利者さんから2時間ひたすら怒鳴られて帰ってきたこともあったよ。でもそこでへこたれない、心をつぶさないようにして次も行くんや。そして、ここで本領発揮してくるのがペアの力や。二人だからこの交渉のやり方ができるんやで」
またまたペアの話に戻ったけど、ペアだったら辛さが軽減されるなんてことあるのかな。カバンモチはペアガシラにも色々言われているのに、さらに率先して大変な権利者さんのところに通うなんてなぁ。ここにも秘訣があるんだろうから、しっかり聞いてみよう!
権利者さんとの関わり方だけでなく、交渉時間の使い方、成果への最短ルートの道筋に至るまでしっかりコントロールしながら進めている様子が手に取るようにわかりましたね。
けれどその交渉ができるのもペアだからこそ、という鶴さん。次回はこのシリーズの最終回です。昭和時代の交渉の真髄をしっかり教えてもらいましょう。
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