- 無茶振りするのに後輩が自発的に動く!?
- 見守って成長を待つから人が育つ
昭和時代に家族のような関係性だった用地ペア<ペアガシラ・カバンモチ>がどうやって用地交渉業務を進めていたのか、引き続きベテラン・鶴さんから経験談を聞いていきます。どんな風にペアがタスクを割り振っていたのか、ペアガシラがカバンモチをどうやって成長させていたのか、当時の人材育成に関わる話がどんどん出てきます。
昭和時代に家族のような関係性だった用地ペア<ペアガシラ・カバンモチ>がどうやって用地交渉業務を進めていたのか、引き続きベテラン・鶴さんから経験談を聞いていきます。どんな風にペアがタスクを割り振っていたのか、ペアガシラがカバンモチをどうやって成長させていたのか、当時の人材育成に関わる話がどんどん出てきます。
今より多い交渉件数を抱えていたのに喫茶店で新聞を読む暇があったという昭和時代の用地ペア。その用地交渉業務のこなし方の中に、今は失われてしまった業務を進めるコツや時短技が隠れているはずだ。
そうでなければ、仕事のやり方を見て盗むなんていう余計に時間のかかりそうな業務管理の仕方はできないはず。もっと突っ込んで鶴さんに聞いてみることにしよう。
「ペアガシラが、まずは登記簿上げてこい、公図や地積測量図上げてこい、取ってきた公図や地積測量図をつなぎ合わせてみろ。住民票取りに行け、戸籍の附票はどうなってんのや。相続が発生していたら、相続関係説明図作って説明しろ、と畳み掛けてくるわけよ」
日々やっておかなければならないことは、ペアガシラがカバンモチに都度指示を出していた、ということなんだろう。今は権利者調査は業者にしてもらうので起業者はチェックするだけだけれど、当時は交渉件数もたくさん抱えているのに業務も色々とこなしていたんだなぁ。
「何も知らない若手職員を捕まえて、指示出しはそんな感じや。最初は法務局で何が発行してもらえるのか、住民票や戸籍をどこでもらうのかも知らないわな。それでも、本当にそんな感じの指示でどうすればいいのかの説明はなし。閉鎖や除票、改製原戸籍とか言葉も知らないし、ましてや登記簿の住所が除票の住民票でも見つからんときは戸籍の附票を請求する...とか全く知らんかった。そういうペアガシラの説明不足なところは、いろいろな人に助けてもらいながらやっていってたんや。まず何から手を付けていいかわからんということもあったけどな」
どうやら、カバンモチとなった若手職員は、用地会社でそこそこ長く働いている私もやったことがないようなことを次々にさせられていたらしい 。
「もちろん最初から完璧にやれるわけじゃない。自分もカバンモチになってすぐは住居表示と地番は別のものということも知らなかったし、地番知るためには法務局に備え付けられているブルーマップ(住宅地図に地番が青色で割り込まれている地図のこと)で調べることも、そもそも公図があまり信用できないということも知らなかったしなぁ。でも何とかこなせるようになっていくものよ、上から言われるとね」
若手なのにかなり知識が深くないとわからないこと、経験がないとうまくできないことも頭ごなしにさせられていたんだなぁ。今ならそんな業務命令を出したらパワハラと言われてしまいかねないな。
鶴さんもカバンモチだった頃を思い出したのか、表情も曇ってきた。
「ペアガシラの命令がどうかしてるといちばん強く思ったのは、明治時代の登記名義人が10人以上の村有林の登記簿から全相続人を確定してみろ、と言われたときやな。正直、この人悪魔か?と思ったわ。民法の"み"の字も知らん、相続の"そ"の字も知らん、もちろん家督相続や相続分が摘出と庶子で違った時代も知らん人間にやらせることかな?そやけどな、必死で相続法を勉強したら何とかやれるもんや。1年くらいかかったけど、100人以上の相続人を全部確定できたわ」
手取り足取り教えていないのに、カバンモチが自分で勉強して遂行するように仕向けるのはすごい。 そんな根性のいるようなこと、なかなか1人でやり遂げられないはずなのになぁ。
指示待ちではなく、自発的に動く人間に育てたペアガシラはすごいな。
自発的に動く部下が育っているというのは、理想的な組織だ。
ほったらかしでそんな行動する人間が育つとは思えないから、ペアガシラは水面下で何かカバンモチの業務フォローをしていたはず...。
「ペアガシラは時間を見ていて、『どこまで進んだんや?』と確認しに来ていたな。できてると『おお、しっかりやってるな』と褒めてくれた。進んでないときは『頑張らんかい!』と言うだけ。ヒントはくれるけど、答えは教えてくれんかった。その頃はペアガシラも実は勉強をしていなくて、相続のことがわからないから押し付けてきてるんかと思ってたくらいや。でも、陰でペアガシラの上司に『もうちょっと待ってあげてください』とお願いしてくれてたんや、後で知ったことやけどな」
なるほど、ペアガシラは進捗状況は把握していて、具体的な指示は出さないけれど見守っているという形 なんだな。役割分担がしっかりできているということだし、急かさずに最後まで待ってくれるのはありがたい。
「用地交渉しているところの全体の相続関係説明図ができあがったら、用地部長や次長のところに連れて行ってくれて、『こいつ一人で相続人を全部見つけてきました。家督相続もあるのに法定相続分もみんな調べ上げてくれました』言うて報告してくれたな。用地部長から『ようやったなあ』って労いの言葉をもらえたときはほんとに嬉しかったな」
いい上司だ、理想的だと言えるんじゃないだろうか。
鶴さんはその当時は全然そういうペアガシラなりの配慮がわからなかった、腹が立つばかりだったと愚痴まじりな話をするけれど、その時は優しくされていると気づいてしまうと甘えてしまうだろうし、それで良かったんだろうな。
今から思えばやけどな、自分に仕事を任されたということが自分を成長 させたし、それがあったから自分に自信が持てた。相続のこととか調べているときは何もわからなくて色んな人に教えてもらってるんやけど、それも自分からお願いして教えてもらいにいったしな。必死で勉強して調べても難問にぶつかって失敗してやり直しになることも珍しくなかったけど、そうやって自分でやり遂げたからこそ、自分のものとして身についたと思う。
あっ、やっと"成長"の話になった!
やっと話が戻ってきた...。
「鶴さん、先輩にほったらかされて知らないままに色々任されて、結果『成長』できた、ということですよね」
「そうや。厳密にいうとほったらかしにされていると感じていたけど、実際はペアガシラがカバンモチの仕事の様子にちゃんと目を配ってくれていた、という話や。カバンモチの成長を見ててくれたんや。ビジネス用語でいうとマイルストーンということかな。節目節目の地点でどこまでやれているか確認して、褒めるとこは褒める。それに、実は自分一人でやり遂げたつもりやけど、実際には聞いていきそうな人には『相談が来たら助けたってや』て事前に声かけてくれていたらしい...。その時は知らなかったけど、もちろん自分がペアガシラになってからは、同じようにわからんようにフォローしてたしな。先輩も同じ気持ちやったっていうことやな」
やっと期待していた話が聞けた。
後輩を育てるために、わからないようにフォローする。そして成長している様子を見届ける。上司に進捗状況について突っ込まれたとしても、代わりに謝る。リーダーとしてこうあるべきとビジネス書で書かれているようなことを、昭和時代のペアガシラは自然とやっていたんだなぁ。
「人が成長するには時間がかかるんや。忙しい中でも成長を待つから次世代が育つ。それが昭和時代の人材育成やったかもしれん」
「聞きたかった話が聞けてよかったです!!鶴さん、長時間ありがとうございました」
「いやいや、君はせっかちだな。時間がないのもわかるけど、そういうところがあかんの違うかな。もうちょっと、この話は続くよ」
鶴さんから貴重な昭和時代の人材育成術についてと、"成長"のキーワードが聞けた田中は、大喜び。博士に早く報告したいところですが、まだまだ鶴さんにはまだまだ人材育成、用地取得のための仕事術のノウハウがあるらしく諌められてしまいました。もう少し、昭和の用地ペアの仕事術について、聞いていきます。
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