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コラム

用地取得 達人への道

「さて今年はじめて用地取得交渉をまかされたけど、やったことがないしどうしよう…」
新人の用地職員にはつきものの悩みですね。でも心配ご無用。
本稿では用地取得交渉の手順とコツを詳しくご紹介します。

ひとりにならない、ひとりにさせないvol.7 ~チーム用地の重要性~

2019年12月02日 公開

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用地職員として働き出した新人が辞めることと、用地取得に関する不正事案の共通点は「一人ひとりバラバラでひとりぼっち」であること、と結論づけた田中。その解決策はどこにあるのか、博士にヒントをもらいながら考えていきます。

職員の孤独を解決したい

今回は珍しく博士から同意をもらい、喜べるはずの田中だったが、表情は暗い。
様々な実害を引き起こしているのが"職員の孤独"という結論が心にかなりズシンときているのだ。

職員の孤独をどうやって解決して、良い方向へ持っていったらいいんだろう?
そもそも問題解決できないなら、依頼された研修も断るしかない。

田中は恐る恐る博士に聞いてみた。

「でも、博士。"一人ひとりバラバラなのが悪だ"と結論付けてしまうと、時代がそういう方向へ進んでいるから仕方がない、という答えで終わってしまうのですが...。それでいいんでしょうか?解決策がなくなってしまうと思うのですが。」

博士からいつものような反論が聞きたくて問いかけてみたが、博士の答えは反論ではなかった。

「時代の流れは止まらん」

小さな声だが、はっきりと言い切きられてしまった。

不正の問題はチェックリストや用地交渉マニュアルをつくって状況を改善することはできるだろうが、根本的な解決にはならない。

人間は千差万別だ。
地権者が100人いれば、100人分の交渉スタイルを求められる。

これまでマニュアルがなかったのはマニュアル化するより、個人を鍛えてどんな人、どんな状況にもフレキシブルに対応できる技能を持った交渉員を育てたほうがいいとの判断からだ。これからもそれは変わらないだろう。

それを聞いても、田中はさっぱりわからない。
だからこれから、どうしたらいいのだろう。

「要は、職員をひとりぼっちにさせない、ひとりぼっちにならない 、ということで間違っていないですよね?」
「そう、真の意味で組織的に仕事をするということだね」

「う〜ん。真の組織化?ではこれから具体的にはどう動けばいいのでしょう。国土交通省からの通達のように、職員が相互不信に陥るほどチェックしまくるというのも...。用地交渉では信頼を基本とすべきなので、ありえない気もします」

本当にどうすれば...。
思い悩んで素直に聞いてしまった田中であったが、すぐ博士から反撃に遭うのはわかっていた。

 チーム用地が私たちを救う

「おい!現場用地に配属されたら辞めていく若手職員が辞めないようにつなぎとめるような用地研修を依頼されたのだろう?君は?」
「はい、そうです。おかげさまでその要因は見えてきましたが、解決策が全く見えません。八方塞がりです。時代の力の前になすすべなく立ち尽くしている感じです」

それが田中の今の正直な気持ちだった。
はっきりいうと、いい加減に答えが知りたい。でもまだ博士の持論が続くようだ。

「我が社の受けている用地交渉業務は厳しいものばかりだ。収用業務も受けている。そんな中で、職員の皆はどんな表情で仕事している?すぐ退職するような職員がいままでにいたか?」
「交渉屋さんのグループは、いつもガヤガヤ楽しそうに席でしゃべっていますね。近くに座っていると、うるさくて、少し迷惑なほどです」

「そうだろう。みんな大変だけどね、『ボロクソ言われたけど、次はどんなストーリーにして、どんな戦術を使って、話を前に進めてやろうか』と頭の中いっぱいなんだ。それをお互いがお互いにぶつけ合っているんだ」
「すごいポジティブですね」

「こういう用地交渉を、我が社では何と呼んでいるのか知っているか?」
「あっ、そうか!これが、いつも博士が言っている『チーム用地』 ですね」

田中の頭に何かが閃いた。解決策の取っ掛かりが見つかりそうになった。
そのとき、博士が後ろから援護射撃の砲弾を放ってくれた。

「もう一歩だ。もう一つ宿題を出すから、よ~く調べて勉強してきてくれ。急がなくていいから、よ〜く分析するんだ」

解決策を教えてくれると思ったが、仕方がない。
「もったいぶらないでください。早く宿題をください!」

こんなに宿題となる課題が早く欲しいと思ったのは初めてだ。
博士の口から放たれた次なる課題は、こうだった。

「我が社の用地取得の特徴は、用地取得マネジメントの実践にある。それは知ってのとおりだ。しかし、国土交通省が通達している用地取得マネジメントと同じではなく、独自のものだ。我が社に蓄積した知恵や経験から生み出した、『チーム用地』用地取得マネジメントだ。それくらい『チーム用地』が重要だと思っているんだよ。この両者は何が同じで、何が違うのか?これが課題だ。がんばって調べてきてほしい。」

新たな課題を抱えた田中だったが、研修依頼をくれた担当者に明るい答えが返せる日が近づいてきている気がして、気持ちは晴れやかだった。この課題に、時代に翻弄され、疲弊した用地取得の仕事を救済する解決策があるかもしれない、いやある。

そう思うと、これまでにない熱意が湧いてきて、早速国交省の通達から調べ始める田中であった。

これで全7回の「ひとりにならない、ひとりにさせない」シリーズは幕を閉じます。最後までお読みいただきありがとうございました。

田中もずいぶん成長してきているようですが、まだまだ博士から学ぶことはたくさんあります。次回から始まる新しいシリーズ「"チーム用地"の用地取得マネジメント」へと続きます。田中は研修・知財担当者ですが、博士から出された課題のため、これから用地取得マネジメントを勉強していきます。専門用語がたくさん出てきますが、田中は無事に理解できるのでしょうか。

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