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コラム

用地取得 達人への道

「さて今年はじめて用地取得交渉をまかされたけど、やったことがないしどうしよう…」
新人の用地職員にはつきものの悩みですね。でも心配ご無用。
本稿では用地取得交渉の手順とコツを詳しくご紹介します。

ひとりにならない、ひとりにさせないvol.4 ~平成7年の事件~

2019年10月15日 公開

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自分なりに用地職員の退職理由を分析した田中。研修内容について博士の意見を求めに行くと、なぜか用地不正防止対策の資料を読んでみてほしいといわれ...。今回は、その不正対策資料の内容と、それを読んで田中が気づいた事実について、追っていきます。

国土交通省から出された不正防止対策の通知内容

用地職員の退職原因分析レポートに目を通した博士から、不正対策の資料を読んでみろと指示された田中。どうして退職の話をしている最中に、博士からそのような指示が出たのか全くわからなかったが、とりあえず無関係の仕事は早く片付けようと早速調べてみた。

すると、「用地取得に係る不正防止」に関係する通知類を3つ、見つけることができた。

(1) 平成12年12月25日付け事務次官通知:近畿地整滋賀国道工事事務所での案件
悪質な地権者等からの脅しや高圧的な高額要求に対して、平成7年度から平成12年度まで職員が架空の物件を設け、また土地面積の水増し等を行って、補償金の増額を行った もの。不正防止対策としては、①個人単位ではなく組織全体での対応、②多段階チェックシステムの確立(金額提示ルールの確立・検査の強化)、③不当要求行為の発生を抑制するための取組が掲げられている。

(2) 平成14年1月29日付け事務次官通知:近畿地整福知山工事事務所での案件
平成7年から平成13年の間に、用地職員が単独で、または知人2名と共謀して10回にわたり、土地に知人等名義の架空建物等が存在するとした虚偽の書類を作成し、補償金を知人等の金融機関口座に振り込ませ、これを領得した もの。不正防止対策としては、平成12年通達のうち特に強化するものとして、①金額提示ルールの遵守、②検査の強化が掲げられ、新たに充実強化を図る事項として③多段階チェックシステムの強化(a交渉担当者相互間のチェックの徹底、b用地担当課長のチェック等の徹底、c第三者によるチェックの確立)、 ④契約の同時一括処理が掲げられている。

(3) 平成23年2月15日付け土地・水資源局総務課長通知:九州地整川内川河川事務所での案件
用地職員が平成20年度に買収用地の立木伐採工事を斡旋するかのように装って地権者から補償金の一部を騙し取った もの。また、平成21年度に無権利の共犯者に立木移転補償金を支払う契約書を捏造し、補償金を騙し取ったもの。さすがに3回目ということで課長通知にして、不正防止対策は前の事務次官通知をより具体化したもので、多岐にわたるとともに詳細な内容となっている。①金額チェックの根幹資料原本として「補償金明細表」を位置づけ、多段階チェックを強化(a用地担当課長のチェック等の徹底、b損失補償台帳等のチェックの徹底、c金額提示ルールの遵守等、d委任払におけるチェックの強化、e第三者によるチェックの徹底、f検査の強化)、②業務委託成果品のチェック、③用地取得マネジメントによる計画的な用地事務の執行、④各県警察及び弁護士会との積極的な連携による不当要求事案への適切な対応を掲げている。

これ以外にも、平成22年から23年にかけて中日本高速道路の用地職員が採石会社から補償金77億円から約4億円をキックバックさせて所得税法違反で逮捕されるという事案が発生していたはずだが、国土交通省関係ではないためか上記のような通知は見当たらなかった。

 不正事件の起点は平成7年?

この4案件を調べて、田中はそれぞれの共通点を考えた。
(1)と(2)の事件は、共に平成7年から始まっている。平成7年は西暦でいうと1995年...。その年はバブルがはじけ、阪神淡路大震災があり、オウム真理教による地下鉄サリン事件があった。

そして、日本が失われた10年、20年と言われる経済低迷の時代に突入していく起点となった年でもある。今振り返るとより鮮明にわかるけれど、それまでの時代と、1995年以降にはずいぶんと違いがある。ある意味、時代の転機となった年が平成7年だ。

そんな平成7年から10~15年の間で、こんなに立て続けに公共用地取得にまつわる不正事件が起こっていたとは。しかも、そのたびに国土交通省の事務次官から不正防止対策通知が出されているにも関わらず起こっているなんてどういうことだろう。

どうして、こんな馬鹿げた不正が官僚組織の中で堂々とできていたのか。
田中は、それが不思議でならなかった。

事務次官通知を見れば、一目で重大性がわかるくらい「チェック」という言葉が連なっている。どれだけチェックをすればいいんだと思ってしまうくらいだ。そんなに全段階的に寄ってたかってチェックをしまくらなければ、不正が同じように起こってしまう というのか?

 不正事件がこんなにたくさん起こってしまうのが不思議でならない。
 しかもなぜ、その事件の発端が平成7年なのだろう。

これ以上はひとりで考えていたってわからない。
とりあえず博士に言われた通り、不正が起こった要因と通知を読んだ感想を提出する準備をしようと田中は席につき、レポートづくりに着手した。

次回は、『ひとりにならない、ひとりにさせないvol.5 用地不正を探る』をお届けします。
平成7年から立て続けに起こっている用地不正事件の要因に田中が迫っていきます。用地職員の退職について考えていたはずなのに、なぜ博士は用地不正について調べろと言ったのか。その関係性がわかってきます。

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