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コラム

用地取得 達人への道

「さて今年はじめて用地取得交渉をまかされたけど、やったことがないしどうしよう…」
新人の用地職員にはつきものの悩みですね。でも心配ご無用。
本稿では用地取得交渉の手順とコツを詳しくご紹介します。

用地屋は1日にしてならずvol.6 ~用地屋のエネルギー補給法~

2019年07月26日 公開

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用地屋が持つべき五感について、博士から教えをいただいています。地権者に対する観察眼を持つという"用地目"の話は、一朝一夕では身につかないかもと心配になるくらい深いものでしたね。

今回は、少しスピリチュアルかも?でも博士の中には根拠がしっかりあるようです。目には見えない、"鼻"のお話を聞いていきましょう。

地権者とのやり取りにはエネルギーが必要だから、用地屋なりの補給を行うことが大切!

田中も、だいぶ博士の話に慣れてきた。
自分でできるかなと不安になることもたくさん聞かされるけれど、実践していきたいなと思うことばかりだ。

ずいぶん長い"用地目"の話の次は用地鼻だろうと決めつけて、「用地鼻というのは、警察犬のように、相手方がどんな人か嗅ぎ分ける能力のことですか?」と博士に話を振ってみた。

博士は珍しく笑いながら、「人の性格が匂いでわかるような便利な鼻があるといいねえ」と田中の顔を見てきた。

人の性格が匂いでわかるような鼻があれば、もちろん便利だ。
でもそんな鼻があったら、社会生活はさぞかし、送りづらいだろうね。
他人の心が見えないからこそ、また自分の心が人には見えないから、それぞれが安心して自分なりの生活が送れているのではないかい?


そうか。他人の心の声が聞こえないからこそ社会生活が成り立っているのか...。プライバシーが守られてこそ安心した生活が送れるというのは納得できる。

心が見えないからこそ、用地屋は地権者の真の声を聴き出す能力を身に付けなければならないんだ。博士は当たり前のように話をしているけれど、田中には新しい発見に思えた。

心が見えないからこそ、お互いを知るためのコミュニケーションがあるんだ

田中は納得したが、それを顔にも口にも出さずに「心を嗅ぎ取れないだったら、用地鼻って何ですか?」とだけ聞いてみた。

博士は「用地鼻というよりは、用地腹かもしれない...」と、次のような話をし始めた。また長い例え話かと思ったが、本当の鼻の役割に関する話だった。

鼻は息をする器官。
息をするというのは、生きることそのものだ。

つまり用地鼻は、用地屋が生きるエネルギーを得ること。
用地交渉には何よりもエネルギーが必要だから、しっかりと意識して得なければならない。

でもそのエネルギーを使って相手を打ち倒すのではなく、相手に寄り添い続け、相手の自立を促し、相手の自主的行動に結びつけるために使うんだ。

イメージとしては中国気功の『気』が近いかもしれない

『気』で相手を動かすには、一瞬でもすごいエネルギーが必要だろう?

でも、用地交渉は一人を相手に2年も3年も付き合い、『気』を使う必要がある。
用地屋はそのエネルギーを毎日、自己調達しなければならないんだよ。

鼻はエネルギー補給を担う重要器官!天地人ポーズでさらに『気』をアップ

静かに聞いていた田中だが、突っ込みたくなってきた。
用地屋が鼻からエネルギーを人並み以上に得なければしんどいというのはわかったが、どうすればいいのか肝心の方法になかなかたどり着かないからだ。

「どうやるんですか?」と思わず聞いてみた。

用地屋のエネルギー補給の基本は、腹式呼吸だ。
腹式呼吸は「はらしき呼吸」ともいうが、われわれは日常生活の呼吸で肺の2割程度しか使っていないから、エネルギー補給のときにもっと肺に仕事をしてもらうんだ。

息を鼻から吸う、そのときにお腹を膨らます。
そして息を口から吐く、そのときにお腹をへっこめる...。

博士は実際にやってみせた。
田中もつられてやってみるが、けっこうしんどい。

お腹の動きのように見えるが動いているのは、実は横隔膜だという。
横隔膜が肺の活動量を高めているらしい。

この呼吸法を、大きく長くゆっくりと。
1セット10回くらい、1日に3セットくらいはやって習慣にしてほしい

腹式呼吸がすべてですか?と聞いてみたが、「すべてではない。基本、基礎だ」と博士は繰り替えす。その呼吸も含めて、大切なのは『気』だという。

ちょっとスピリチュアルな感じ...と田中は抵抗もあったが、博士のことだから根拠があるのだろう。

『気』のためには、イメージトレーニングが必要で、「『大樹』になりなさい」と博士はいう。順番はこうだ。

1.天地人の姿勢を取る
2.目をつむる
3.姿勢が安定したら、両手を広げ、自分が大地に根を張り、天に大きく伸びた大樹になり切る
4.大きく腹式呼吸をしながら、大地からエネルギーを吸い上げ、身体に蓄えていく
5.腹式呼吸を終えたら、目をあけ、また天地人の姿勢に戻る
6.胸前に合わせた両手で、今生きていることに感謝をする
7.その姿勢のまま、大股で歩き出す

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この天地人ポーズによって、大きなエネルギーが宿っているという自信、そして生かされているという感謝が自分にみなぎる。それを通し、大きな力が与えられるのだという。

この話を聞いた田中は、思わず「何か宗教じみてきてません? 博士が新興宗教の教祖様のように見えてきましたよ」とつぶやいてしまった。

けれど博士としては、自身が体感しているんだから...と言いたげだ。

「確かに『気』という言葉を使っているから宗教じみるかもしれないね。でも、決して根拠のないことではないよ。きちんとイメージしてやると、本当に力が湧いてくるんだ」と静かに言った。博士によると、天地人のポーズも習慣化が大切で、毎朝行うと効果が高いそうだ。

頭が真っ白になったら、姿勢を正して深呼吸

もう一つ、用地屋ではエネルギー補給の用地鼻以外にも、身に付けなければならない"危機回避の用地鼻"があるらしい。用地交渉や、地元説明会などで役に立つという。

「用地交渉にしろ地元説明会にしろ、相手の状況に合わせて、自然体で自在に対応できるに越したことはない。けれど、その域に達するには20年~30年を要するぞ」と博士は遠い目をする。

その域に達していない普通の人は、自分なりにその日の交渉のシナリオを描き、想定問答を作り、その場その場を乗り切る努力をしている。けれど、突発事象は避けられないし、一瞬、頭が真っ白になることもある。動悸が早くなって、真っ当な思考力が戻ってこないこともある。

どう答えたらいいのかわからなくなり、動悸が早くなって、思考力が戻ってこないときに役立つのが、危機回避の用地鼻だ。

ざっくりいうと、そんなときにエネルギーを補給する方法だ。

1.姿勢を正す
2.リラックスする(リラックスできないようなら、まず肩の力を抜いて、それもできなければ、笑顔になって。笑顔にはリラックス効果があるんだ)
3.相手に気づかれないように、大きく口から息を吐く
4.呼吸を4,5回繰り返す

「この呼吸によって自分に意識が戻り、対処方法を考えられるようになるはずだ。吸う方は意識しなくても自然にできるから、吐くことに意識を向けてな」と博士はニコニコしている。

そんな状態に直面したら緊張してできなさそうだが、頭が真っ白になったときにそれしかないなら、何とかやってみるしかない。

そして、いつものことながら、博士は「すぐにできるわけないんだから日常生活のなかで習慣的にやっておきなさい」という。

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ちょっとした休憩時に、椅子に浅く腰掛け、姿勢を正し、リラックスして危機回避の用地鼻をやってみる。

スッキリする。15時の休憩に毎日やってみることにしよう!

次回は、とうとう核心に迫る、用地屋のもつ口について。『用地屋は1日にしてならずvol.7 〜用地屋の話し方〜』をお届けします。

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